ショート劇場

□克哉くんの恋人
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片桐さんの恋人をしていると、予想外の事が多々起きる。

「合コン?」

片桐さんが俺の自宅に訪ねた時、怖ず怖ずとそんな話を切り出された。

「はい・・・。本多くんに誘われまして・・・、その断り切れず・・・」

「OKした訳ですね?」

静かに問い質すと、片桐さんは小さく頷く。

(本多の野郎・・・。後で殺す)

「それで佐伯くんも、誘ってくれと言われまして」

「俺ですか?」

片桐さんは困った様子で、はいと答える。

「・・・。しょうがないですね」

「参加するんですか?」

「だって貴方を、誰かに持ち帰られたらダメでしょう?」

片桐さんの事なので、誰かに言いくるめられて襲われでもしたら大変だ。

そんな考えが馬鹿過ぎるのは分かっているが、有り得ない話ではない。

「でも僕は・・・」

「ん?何ですか?」

恥ずかしげに視線を反らされ、その意味を知っている癖にもう一度尋ねた。

「片桐さん?俺が参加するのに、何か不都合があります?」

「いえ・・・、その・・・あのですね」

真っ赤な顔をして言い淀む片桐さんが、可愛くて仕方がない。

「分かってますよ。俺は貴方だけが好きです」

俺が誰かに言い寄られるのが心配だったので、あからさまに安心した様に微笑んだ。

(本当に貴方は・・・)

何度、伝えても俺が誰かのモノになるのを怯え

誰かのモノになるのを願う。

相反する感情に、貴方は何時も心を痛めている。

少しでも和らげる事が出来るなら、俺は何度でも伝えたい。

「だから、俺だけを好きでいて下さい」

「はい・・・」

口付けだけでは伝わらず

愛の言葉も貴方は疑う。

それでも俺は貴方を愛している。
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