ショート劇場
□雪が降る街に君を捜す
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One more time one more chance.
もう一度、君に出会えば、この気持ちに、名前が付くのだろう。
けれど、もう二度と、君に出会えない。
全てを断ち切る様に、荷物も住む所も捨てた。
今でも思い出すのは、君の最後の言葉。
また君に出会えるなら、私は何を差し出せばいい?
自問自答しては、自分の馬鹿さ加減に苦笑する。
あの時は、そんな1年を過ごした。
そして雪が降れば、また思い出す。
今度は、君と再開した日を。
「今日か・・・」
雪が静かに降り積もり部屋を冷やしていたが、佐伯の温もりが体を暖めてくれる。
カレンダーには何も書かれていないが、今日は君と再開した日。
前は記念日に興味がなかったが、今日だけは覚えている。
あれ程、嬉しくて死にそうな日はなかった。
「う、んっ・・・」
モゾモゾと動き出し、二度寝を決め込む佐伯をそのままに、リビングに向かう。
新しい始まりを告げた雪。
あの日、佐伯と出会う為に、私が差し出したのは・・・。
「ハァー・・・」
悴む手に息を吹き掛けて、空を見上げる。
「まだ、降っていてくれよ・・・」
それだけ願うと、朝ご飯の支度に急いだ。