1ページ劇場

□大人が二人
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出社と同時に開口一番、怒られたのは生まれて初めてだ。

「お前という奴は、会社に何て物を持ち込んでるんだ!」

御堂が掲げているのは、茶色の紙袋。

「中を見たんですか?」

「見たから、怒ってるんだ!!」

怒鳴る御堂を横目に、椅子に座ると引き出しの中を確認した。

(見つかったのは、アレだけか)

「聞いてるのか佐伯!」

「聞いてますよ。御堂さん、それ貴方にあげます」

「はぁ?」

怪訝な顔で見られ、素知らぬ顔で微笑んだ。

「煮るなり焼くなり使うなり、好きにして下さい」

「・・・何を企んでる?」

「どうせ御堂さんが使いたくないって言ったら、捨てようと思ってた物なんでね」

「私は使用しないぞ」

「じゃあ捨てて下さい」

「本当に使わないからな!」

何度も確認する御堂に、どうぞと促した。

(まだ一杯あるからな)

胸の黒い感情を悟られぬように、ほくそ笑んだ。

「取り合えず、仕事をしませんか?」

「あぁ。・・・そうだな」

疑惑の眼差しは続いているが、罪悪感からか御堂は大人しく椅子に座った。

「佐伯。怒ってるのか?」

「いいえ?あんな事で怒る程、俺は心が狭くないですよ」

「それならいいが。二度と会社に持ち込むなよ」

「家ならいいんですか?」

「ば、それは!!」

羞恥に顔が染まる御堂に、喉の奥で笑う。

「貴様、馬鹿にするなよ!」

「してませんよ。今度、家で使いましょうね?御堂さん」

「絶対、使用しない!この変態!」

「その変態が好きなんでしょ?淫乱な御堂さん」

「鬼畜!」

「鬼畜ですが、何か?」

「お前という奴は!!」

バンッと机を叩くと、悔しそうに俺を睨みつける。

「あの〜?」

「今、忙しい!」

「藤田、後にしろ」

「大体、君はもう少し常識をだな」

「御堂さんよりは、常識がありますよ。だって仕事を、今してるじゃないですか」

「私だって、仕事をしたいさ!でも君が・・・」

売り言葉に買い言葉を続けながら、仕事をこなす二人は

(似た者同士ですかね)

と藤田は思った。

「佐伯!貴様、もしやまだ隠してるな!」

「ちょっと待て!俺のプライベートゾーンだぞ!」

そして引き出し一杯の玩具が見つかり、二、三日御堂に口を聞いて貰えなくなった。


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