妄想劇場

□世界の構築式
3ページ/9ページ

猟奇殺人事件。

被害者の脳味噌を調理するという残忍な殺人の捜査に、克哉は頭を掻いた。

「こんな事件、嫌だな」

「まあ・・・。気持ち悪いからな」

本多が同意しながら、近隣に聞き込みした情報を手帳に記す。

得た情報は、目撃証言なし。

「まったく。一人でもいいから、見てろって感じだぜ」

ぼやく本多を余所に、大きな声が克哉を呼ぶ。

「克哉さんだー!!」

「うわっ!っとと、太一!危ないだろ!」

「ありゃ、ゴメン、ゴメン」

背中に太一の重みを感じながら克哉が怒鳴ると、軽く謝罪して地面に足を付く。

近所の喫茶店でバイトしている青年に、克哉はもうと言いつつ微笑む。

「仕事?もしかしてテレビのやつ?」

克哉の職業を刑事だと知っている太一は、興味津々に尋ねた。

それに頷いた克哉に、太一は得意げに人差し指で空を指差す。

「俺、犯人は女だと思う」

「どうして?」

「テレビで言ってたビーフシチューを作るのって、ものスゲー時間が掛かるんだ」

本多はそうなのかと、顎に手をやり思案する。

「つまり、時間が掛かる料理を、男が作る訳ない?」

「ピンポーン!」

「・・・太一。それは証拠になりません」

そう言いながらも克哉は、だよねと笑う太一の頭を撫でる。

「でも、ありがとう。頭に入れとくよ」

プロファイリングでは、体重100kg以上で握力150kg以上の大男とされていた。

けれど克哉は太一に何も言わず、御礼を述べる。

「そうして!そんで、早く犯人を捕まえてよ?」

「うん、分かった」

屈託ない仕種で、太一が克哉の小指を取り約束を交わす。

けれど、第2の犯行が行われる方が早かった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ