妄想劇場
□世界の構築式
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生命が生き続けるには、水が必要不可欠である。
母体にある羊水から始まり、身体の機能を維持する為の水。
なにせ、人間の体の60%は、水で出来ているのだから。
「美味しそうな匂いですね〜。シチューですか?」
小さなアパートの一室で、藤田が何とも間抜けな声で尋ねる。
「んんっ?しかもビーフシチューみたいだぜ?」
本多がコンロにある鍋の蓋を開けると、藤田が美味しそうと形容した料理が煮込まれていた。
「二人共、あんまり触るなよ?まだ鑑識が調べてないんだから」
近隣の通報から発見された遺体に、手を合わせながら克哉は横たわる男性を見遣る。
「藤田、見てみろよ。肉の塊が入ってるぞ」
「うわっ、金持ち」
克哉がどんなツッコミだよと内心で思う横で、検死官が歪に曲がる頭部を軽く持ち上げた。
「嘘だろ?すごく、・・・軽い」
そんな言葉を聞いて、恐る恐る克哉が頭部を見詰める。
「脳味噌がない・・・」
克哉が呟くと一瞬の沈黙の後、現場にいた全員が部屋を飛び出していく。
今もコトコトと煮込まれるビーフシチュー。
そのビーフシチューに、被害者の脳味噌が煮込まれていた。