オペラ劇場
□GO ACTION
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宵闇の中を帰宅していると、部屋の明かりが点いているのに気付いた。
「・・・お前は何をやってるんだ?」
「おっ?お帰り、先に飯食ってるぜ」
そして案の定、部屋の中には暑苦しい奴。
「それはいい。何しに来た」
「一言、言いに来た」
「ほぅ?何だ?」
ネクタイを外し、食卓に座る本多の前に腰掛けると、深呼吸したあと話し始める。
「電話の時に、舌打ちするの止めろよな」
「・・・」
「それと、どうせ俺が分からないと思ってしてるだろうけど、電話中に手ぶらフォンに変えて、適当に相槌するな。俺が一人で喋って、バカみたいだろ」
等と、まだまだ続く愚痴に、思わず笑いが込み上げる。
「お前は、そんな事を言う為だけに日本に来たのか」
「当たり前だろ。無理矢理、二日も休みを取ったんだ。とんぼ返りの俺を、少しは考えろ」
「・・・考えてるさ。ここは、余り面白くないからな」
眼鏡を抑えて身を乗り出すと、俺の言葉に目を丸くする本多の顎を掴む。
「だから早く引退しろ」
「・・・。プッ、ハハッ!そう来たか」
可笑しそうに肩を揺らしながら、俺の口付けを受け入れる。
そして唇を離すと、本多に教えた。
「それと俺は明日から1週間、休暇を貰った」
「マジかよ」
「擦れ違わなくて良かったな」
けれど物理的な距離など、俺達には関係ない。
逢いたくなれば届く距離に、相手がいるから。
ただ今度から、向かう前には電話をしよう。
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