オペラ劇場
□リバースエッジ
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《ヤンデレ注意》
人間に無駄な感情なんかない。
それなら克哉さんを想う感情の中に、ほの暗い感情があったとしても
それは当たり前の感情だろうか?
「・・・随分と遅かったね?」
克哉さんは律儀だ。
それゆえ、赦せない時がある。
「連絡っ・・・した・・・っっ、だろ、う?」
「連絡?ああ、遅くなるってメール?」
床に組み敷いた克哉さんは、驚いた様に俺を見上げていた。
ほろ酔い気分で帰宅した早々、押し倒されれば誰だってビックリするが
俺が怒っているのに気付き、無理矢理に犯すと怯え始めたのが気に喰わない。
小動物みたいに、俺に飼われ、俺が触れれば喜んでくれたらいいんだ。
「た、いち、あうっ。・・・ゴメ、ンっ」
「何を謝るの?遅くなった事?俺が知らない誰かと逢ってた事?それとも浮気したとか?」
「して、ないよ・・・っう」
酒の所為か赤く染まる克哉さんの肌に何度も噛み付き、痛々しい赤い痣が満遍なく散らされている。
『大学の時の友人の、松浦と飲んで帰るから遅くなります』
名前を聞かされたって、俺はそいつを知らない。
知らない奴と、知らない場所で逢って、知らない話を克哉さんがしてる。
想像しただけで、どす黒い感情が湧き出る。
「ゴメン・・・。ゴメン、謝るから・・・もう、やめて」
「あのさ・・・。悪い事してないのに、克哉さんは俺に謝るの?」
「だっ、て怒ってる、からっ」
「それ理由にならないよ。だからさ・・・。克哉さんが謝るのって、俺に後ろめたい気持ちがあるからだろ?」
低い声で尋ねると、涙目で俺を見上げる瞳が微かに揺れ動く。
そうか、後ろめたいんじゃない。
こんな事をする、俺が怖いのだろう。