オペラ劇場

□僕の花
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《本多を捏造してみた》

愛おしいと思える存在。

それは俺の恋しい人の事。

だから、そんな哀しい顔をするな。

そんな顔のお前を、俺が抱きしめる事が、出来ないのだから。



急にバレー部を辞めた克哉。

あの時、俺は引き留める事が出来なかった。

「本多?人の話を聞いているのか?」

「へ?あ、ああ・・・」

大学の学食でスプーンを口に食わえながら頷くと、前に座る松浦は呆れ顔で口を噤む。

ボンヤリと視線を泳がせば、見知った顔が目の前を通る。

「・・・」

思わず腰を上げたが、ユルユルと戻した。

バレー部を辞めた克哉と俺には、もう接点がない。

(話し掛けるのはOKか?でも何て?天気いいな?バカか!?見りゃ分かるって!)

悶々と考えを纏めていると、遠くの席で克哉は食事を始める。

(本当に綺麗な顔してるな・・・)

優雅な手つきで、箸を動かしていく。

けれど、その表情は哀しい位に寂しそうだと感じる。

ようやく出来た接点が、今はもうない。

「本多、行くぞ?」

「・・・ああ」

松浦の後に続いて席を立つと、やる瀬ない気持ちが募る。

バレーと言う接点しかないなら、新しく何かを作ればいいのに

それが出来ない俺は、弱い存在だと気付いた。

「・・・クソッ」

「えっ?お、おい本多・・・」

それに嫌気がさして、食事する克哉の前にドカッと座る。

「辛気臭い顔して食うな。マズい飯が余計マズくなるぞ?」

克哉はキョトンとした後、俺に苦笑する。

「本多。それ作った人に失礼だよ?」

良かった。俺の名前を覚えててくれて。

そんな事を内心で安堵して、それからも克哉と話す機会を増やした。
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