オペラ劇場
□真実の詩
1ページ/3ページ
まだ愛して。
まだ僕を見限らないで。
僕はまだ頑張れる。
お願いだから、そんな顔しないで『 』
「ハッ!!」
夕暮れの中、ソファーから飛び起きて辺りを見回す。
煩い位に鳴り響く心音が、段々と落ち着いていくのを感じながら
上げた腰を、ソファーに下ろした。
「うたた寝してたら、嫌な夢見ちゃったな・・・」
自分の手を見詰め、冷や汗が背中を濡らしていた。
頑張れ、頑張れ、頑張れ。
何を?どれを?何で?
「秋紀?どうかしたのか?」
夕飯を作っていた克哉さんが、様子がおかしい僕を心配してくれる。
ねぇ、克哉さん。いつまで僕は子供で
いつから大人になって
いつになったら、頑張らなくていいのかな?
「大丈夫!あ〜あ、お腹減ったな〜」
「・・・。そうか、もうすぐ終わる」
「お手伝いするね!」
頑張らない僕を、どうか愛して下さい。
克哉さんの背中を追い掛けながら、心の中で呟く。
偏差値が高い学校は、母親の趣味。
僕の成績が高いのは、父親の御蔭。
僕は選ぶ事が出来なかった。
けど克哉さんだけは、自分で選んだ。
この人に愛して貰いたい。
『秋紀。お母さんに恥を掻かせる積もり?』
お母さん、僕は頑張ったよ?
毎日、毎日、頑張って勉強して、頑張ったのに・・・。
どうして、そんな顔をしてるの?