オペラ劇場

□Heart
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一人暮らしの寂しさには、慣れたつもりでいた。

「うん。大丈夫だよ・・・。・・・分かってるから、じゃあ・・・」

久しぶりに実家からの電話を終えると、ふぅと溜め息をつく。

心配かけているのは知っているが、もう大人だから大丈夫だと言いたい。

「いつまで経っても、子供扱いだもんな」

苦笑しながら時間を確認すると、8時を少し過ぎた時間。

ベッドに座ると、今まで家族と繋がっていた携帯を弄る。

そして耳に当てると、いつもの声が聞こえた。

『どうかしたか?』

開口一番がそれなのは、いつも本多にも心配かけているからだろう。

「何にも無いけど?」

『チェッ。声が聞きたいとか、逢いたいとかないのか?』

オレの返しが不満だったのか、拗ねた様に本多が言う。

「それってオレがじゃなく、本多がだろ?」

『おっ?よく分かってるな。それなら今から行っていいのか?』

冗談混じりの本多の言葉に、時計を眺めて言葉にする。

「うん。本当は逢いたい」

1分にも満たない会話が、とても貴重な時間に感じる。

『・・・しょうがないな。ダッシュで行ってやるよ』

「ふふっ・・・。じゃあ待ってる。・・・けど」

1分1秒でも、惜しい時がある。

この寂しさを埋めれるのは、本多だけだから

早く逢いたいし、早く抱きしめられたい。

そんな時は時間が早く過ぎて、明日になるのを待ち望んでいた。

けれど今日は素直に言いたい。

「寂しいから、早く来いよ?」

そして、いつもの声で応えてくれる。

『おぅ!』

それが好きだよとは、電話では言えないから

本多が早く来ないかと、窓の外を眺めて待っていた。
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