オペラ劇場

□RESISTANCE
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自らの手で触れる場所は、少し熱く気持ち悪い位に脈打つ。

「・・・っ」

ぎこちなく下から上に扱き、機械的に手を動かす。

頭が考えるのを拒否していた。

ただ早く終わりたい。

ただ、もう消えてなくなりたい。

「今、君は誰を考えてしているんだ?」

「・・・えっ?」

誰を?考えて?自分を慰めているのか?

細めた彼の瞳の中には、何かが渦巻いていた。

(どうして・・・、そんな事を?)

疑問にすれば容易い言葉。

口にするのは憚れる言葉。

「あの本多とか言う同僚とでも、君は寝れるのだろう?」

「オレは・・・。本多とそんな関係を、築く積もりはありません」

「・・・嘘だな。君は誰とでも寝れる淫乱だ。現に君のは、もう大きいぞ?」

色を無くした瞳で、自身のモノを見詰める。

彼の言葉通りオレはこんな状況でも、感じていた。

「・・・そう・・・ですね」

声にならない程に小さく呟くと、崩れ落ちる音が聞こえる。

硝子の心臓が粉々に砕け、床に散らばり

追い打ちを掛ける様に、彼に踏み付けられる。

自尊心も自衛心も、跡形も無い位に壊された。

「ようやく認めたか・・・」

散らばる破片は、毟られた羽根の様に風に流される。

もうオレは真っさらな気持ちで、空を飛べない。

「・・・」

こんな醜い心では

もうニドとオレは、ダレもアイせない。

絶望の底は、とても暗く澱んで思考すら必要ない。

だからオレは思考を捨て、彼が饒舌に喋る言葉に、ただ頷き相槌を返す。

そうする事で、オレは彼から安寧を受け取れる事ができ

代わりに彼のマンションで、自由を奪われた日々を送る事となる。


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