お題劇場

□四月馬鹿
1ページ/1ページ

4月1日は、いい嘘を付いていい日。

いい嘘とは、嘘だと知って、安堵できる嘘の事を言う。

「なぁ、克哉。11日は、仕事早く終われるよな?」

1日から、11日の予定を気にする本多に、さあなと答える。

「その日は、忙しくて泊まり込みかもしれない」

「そっか・・・。なら仕方ねぇな」

残念そうに肩を落とす本多に、喉を鳴らして本当の事を伝える。

「今日はエイプリルフールだから、これは冗談だ。11日は、休みにしてる」

「ホントか?ん・・・、ちょっと待てよ。もしかして、それも嘘か?」

「嘘だと思うのか?」

頭を悩ませ始める本多を余所に、朝飯の支度に向かう。

「克哉の事だから、2重の罠か・・・。いや待てよ?本当かもしれねぇし・・・」

考えがだだ漏れの本多は、俺が朝飯を作り終わるまでブツブツ呟き、最後には頭を掻き毟る。

「ダァーッ!!お前の事、信じてるから、休みだな!!」

「それは、どうも」

「嘘だったら、千本アタックしてやる!!」

喚きながら用意した食パンを齧り、俺の休みを楽しみにしている本多。

エイプリルフールでも、この馬鹿は俺に絶対の信頼を置いている。

「本多。今日は、いい嘘しか付けないんだぞ?」

本多が意味を理解する頃には、安心した笑顔で誕生日を迎えるだろう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ