お題劇場
□四月馬鹿
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4月1日は、いい嘘を付いていい日。
いい嘘とは、嘘だと知って、安堵できる嘘の事を言う。
「なぁ、克哉。11日は、仕事早く終われるよな?」
1日から、11日の予定を気にする本多に、さあなと答える。
「その日は、忙しくて泊まり込みかもしれない」
「そっか・・・。なら仕方ねぇな」
残念そうに肩を落とす本多に、喉を鳴らして本当の事を伝える。
「今日はエイプリルフールだから、これは冗談だ。11日は、休みにしてる」
「ホントか?ん・・・、ちょっと待てよ。もしかして、それも嘘か?」
「嘘だと思うのか?」
頭を悩ませ始める本多を余所に、朝飯の支度に向かう。
「克哉の事だから、2重の罠か・・・。いや待てよ?本当かもしれねぇし・・・」
考えがだだ漏れの本多は、俺が朝飯を作り終わるまでブツブツ呟き、最後には頭を掻き毟る。
「ダァーッ!!お前の事、信じてるから、休みだな!!」
「それは、どうも」
「嘘だったら、千本アタックしてやる!!」
喚きながら用意した食パンを齧り、俺の休みを楽しみにしている本多。
エイプリルフールでも、この馬鹿は俺に絶対の信頼を置いている。
「本多。今日は、いい嘘しか付けないんだぞ?」
本多が意味を理解する頃には、安心した笑顔で誕生日を迎えるだろう。