オペラ劇場

□柊
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《捏造秘話 澤村独白》


ただ、ゴメンと言えばよかった。

優しくしてくれて、ありがとうと言えば、これ以上、君を傷付けなかった。

それなのに、僕は君を傷付けた。

こんなにも季節が巡るのに、あの桜の降る場所から一歩も動けない。





高校の学生服は、とても窮屈で息が詰まる。

他愛もない話に相槌を打つのも

他愛もない話を耳に入れるのも

とても・・・、とても・・・、窮屈。

小さな箱に無理矢理、詰め込まれた様に、同じ者が潰れる程に入れられた教室。

「・・・」

あと何年経てば、こんな思いから解放されますか?

『紀次!見て!これ面白いだろ?』

無邪気に笑えた日々。

『あんな子に負けるなんて赦さない』

僕の世界は狭い。

狭くて、小さくて、一つしか選べなかった。

(いや・・・、選ばされた・・・)

君を選べば、僕は・・・。

『本当に情けない。次は勝ちなさい』

息が詰まる。

早く解放されたい。

教室から見える場所に、君はいない。

『どうして・・・』

ああ・・・、どうして何だろう?

君を傷付けたい訳じゃない。

僕の傷に気付いて欲しかった。

君が凄ければ凄い程に

僕の醜い心が闇色に染まる。

季節が巡る。

けれど君は此処に居ない。
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