オペラ劇場

□COLORS
2ページ/3ページ

「♪〜♪〜♪〜。とぉ!」

「太一、危ないよ?」

本多と別れ、鼻歌混じりに太一が車止めを歩き、オレの前に飛び降りる。

「本多さんって、いい人だね」

「うん。大学時代から、世話を焼いてくれてるからね」

太一はふーんと言って、歩き出す。

離れ行く背中。

思わず声を掛けると、太一は笑顔で振り向く。

「克哉さんには、俺だけでいいのに」

「・・・。太一、それは・・・」

離れた距離が縮まり、目の前に太一の顔がある。

「ちょっと前なら、そう思ってた」

「・・・」

「今はね・・・。克哉さんを、好きな人がいて良かったなって」

目の前の太一は、とても清々しい顔でオレの手を握る。

「世界に俺達だけでもいい。だけど、克哉さんには、温かい世界に居て欲しい」

二人きりでも、寂しくはない。

けれどオレ達を愛してくれる人が居て、初めて世界が色付く。

赤、青、黄、緑、紫。

白黒の世界に鮮やかな色彩が色付いていく。

オレが知らない間に、背伸びを止めた太一は

とても強く

そして大人になっていた。

(オレも、太一みたいになりたい)

この言葉は、いずれ太一に伝えよう。

そうすれば、自由に飛び回れる翼が、オレ達の背中に生える。

「行こう、克哉さん!」

その翼で色鮮やかな世界を、二人で見て回ろう。

「うん!」

鮮やかな色が色付く世界が、オレ達を優しく迎えてくれるから。


Next→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ