オペラ劇場
□COLORS
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「♪〜♪〜♪〜。とぉ!」
「太一、危ないよ?」
本多と別れ、鼻歌混じりに太一が車止めを歩き、オレの前に飛び降りる。
「本多さんって、いい人だね」
「うん。大学時代から、世話を焼いてくれてるからね」
太一はふーんと言って、歩き出す。
離れ行く背中。
思わず声を掛けると、太一は笑顔で振り向く。
「克哉さんには、俺だけでいいのに」
「・・・。太一、それは・・・」
離れた距離が縮まり、目の前に太一の顔がある。
「ちょっと前なら、そう思ってた」
「・・・」
「今はね・・・。克哉さんを、好きな人がいて良かったなって」
目の前の太一は、とても清々しい顔でオレの手を握る。
「世界に俺達だけでもいい。だけど、克哉さんには、温かい世界に居て欲しい」
二人きりでも、寂しくはない。
けれどオレ達を愛してくれる人が居て、初めて世界が色付く。
赤、青、黄、緑、紫。
白黒の世界に鮮やかな色彩が色付いていく。
オレが知らない間に、背伸びを止めた太一は
とても強く
そして大人になっていた。
(オレも、太一みたいになりたい)
この言葉は、いずれ太一に伝えよう。
そうすれば、自由に飛び回れる翼が、オレ達の背中に生える。
「行こう、克哉さん!」
その翼で色鮮やかな世界を、二人で見て回ろう。
「うん!」
鮮やかな色が色付く世界が、オレ達を優しく迎えてくれるから。
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