オペラ劇場
□COLORS
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強くなるよと克哉さんが誓った日に、本当は伝えたかった。
『強くならなくていい。ずっと俺に、克哉さんを守らせて』
無垢な雛鳥を、ずっと卵の中に閉じ込めたい。
これ以上、大人にならないで。
そんな子供の様な感情。
「見ない内に大きくなりやがって!」
「母親みたいな事、言うなよ。本多」
「げっ!本多さんが母親?マジ勘弁して〜」
ようやく本多と約束した飲み会に、太一と共に訪れた。
ジョッキで乾杯してから、本多はそんな事を言いだし太一が茶化す。
「勘弁するも、父親は御堂だぞ?」
「うわっ!それも遠慮したいです」
「ちょっと、本多。御堂さんが聞いたら、怒られるよ?」
二人を窘めるがお構いなしに、じゃあ片桐さんは?とか話を弾ませる。
太一が本多と仲良く話してくれて、内心ホッとした。
時折、太一は嫉妬心を剥き出す事がある。
『なに、克哉さん。もしかして浮気したいの?』
そんな時の太一は、底知れない闇を纏う。
「・・・」
闇を振り払う気配も無く、淡泊にオレを眺める太一を、無性に抱きしめたい衝動に駆られる。
抱きしめて、胸に抱き優しくしたい。
これを母性とも呼ぶんだけど、太一はそれを嫌う。
子供になりたくない。
精一杯、背伸びして、オレより上に立ちたいと願う太一。
「あー、分かる!克哉さん、優しいからさ」
「だろ?だからさ・・・」
オレの話で盛り上がる二人に、もう止めてよと笑いながら話すと
嫌だねと同じ笑顔を返された。