オペラ劇場

□BLUE
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どんなに夜が続いても、太陽はいつか真上に現れる。

それを待ち望むのは、愚の骨頂だと思っていた。

どんなに離れようとも、離れられないと知った日には

愚かじゃなく、太陽がいなくて寂しかったのだと知る。





叫びたい、怒鳴りたい、叱りたい。

そんな思いを、さっきから抱えていた。

「頼むから静かにしろ・・・」

「キャー!たっくんがボール取ったー!」

「こら、拓也。美咲にボール渡せ」

「嫌だよ!これ僕のだもん」

本多が頼まれた子供会の、草バレーのコーチに付き添いで来たはいいが

元気過ぎる子供達に、頭が痛くなってくる。

「拓也。あんまり意地悪すると、美咲に嫌われるぞ?」

「本多ぁ・・・」

「チェッ。嘘泣きなんてズルイよな」

拓也の言葉にコツンと頭を叩くと、大袈裟に痛がり本多を睨みつける。

「お前は本当に、そう思うのか?美咲が、わざと泣いてるって?

俺には、泣きたくないと見えるんだが?」

「・・・」

美咲が拓也に見られ、グシグシと顔を手で拭い、笑顔を作ろうとするが

本多に頭を撫でられ、泣き出してしまう。

哀しさで泣きたくなく、優しさに触れて泣いてしまう。

そんな美咲にボールを手渡し、ゴメンと拓也は呟く。

それを嬉しそうに受け取り、一緒に遊ぼうと二人はコートに向かった。

「なんか、可愛いな」

「そうだな・・・」

よく晴れた、日曜日。

「ゴメンな。付き合わせて」

「・・・別に構わない」

こんな時間も悪くない。

素っ気なく答えると、本多はそうかと笑う。

コート内で、バレーボールを投げて遊ぶ子供達。

それを見守る本多は、優しい瞳をしている。

「・・・。お前は、バレーをしなくていいのか?」

「あ?してるぜ?」

「草バレーじゃなく・・・。いや・・・、忘れてくれ」

本多に質問した自分を、心中で馬鹿かと罵った。

こいつがバレーを止めた理由は、八百長試合を勝手に断った俺達の罪滅ぼしだと思っている。

本気でしたいなら、どこにでも行ける実力を持っている筈なのに

ここに留まるのが、大きな答えだ。

「・・・」

もう俺は、お前を赦している。

だから自分を偽るな等と、口を裂いても言いたくない。

言っても本多は、俺の言葉に抗い罪を背負い続ける。

それなら気付かない振りをして、罪すら無かった事にしてやりたい。

「コラー!コートから出るな!」

コートから逃げる子供に、走って追い掛ける本多。

少しだけ笑って、空を見上げた。

今日も快晴で、太陽は真上にある。

そんな雲も何もない空を、ただ見上げていた。
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