オペラ劇場

□BLUE
2ページ/4ページ

仕事中に携帯の着信が掛かり、通話ボタンを押すと珍しく佐伯からだった。

『仕事中ゴメン。今から言う場所に、来てくれないか?』

切羽詰まった声音に、どうしたのか聞き返すと、困った様子で説明を始める。

『バレー部の奴が、本多に会いに来たんだけど。ちょっと様子がおかしくて・・・』

「それで?」

喋りながら仕事場を出て、タクシーを掴まえる。

『後ろを付けたら、数人で本多を囲んでるんだ』

「・・・」

『まだ話し合い程度なんだけど・・・。でも何かあったら、オレは本多を庇うから・・・』

「・・・だがアイツが、それを望まない」

うんと寂しそうに呟く佐伯に、すぐに向かうと言って通話を切る。

「・・・バカばっかりか」

佐伯は話し合いで終わるなら、それでいいと考える。

けれど終わらない場合、説得できるのが俺しかいない。

深い溜息を付くと、運転手に早く向かってくれと頼む。

そして流れていく町並みに、今は構っている余裕もなく前だけを見詰めた。

(頼むから、何も起こらないでくれ・・・)

お互いに、傷付かないで欲しいが

佐伯と同じで、何かあれば俺は本多に味方してしまう。

それを見た本多は、自分を責めるだろう。

だから俺に、本多を守らせないでくれ。

「・・・」

理不尽な想いだと罵られても、俺は本多が大切だった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ