オペラ劇場
□BLUE
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仕事中に携帯の着信が掛かり、通話ボタンを押すと珍しく佐伯からだった。
『仕事中ゴメン。今から言う場所に、来てくれないか?』
切羽詰まった声音に、どうしたのか聞き返すと、困った様子で説明を始める。
『バレー部の奴が、本多に会いに来たんだけど。ちょっと様子がおかしくて・・・』
「それで?」
喋りながら仕事場を出て、タクシーを掴まえる。
『後ろを付けたら、数人で本多を囲んでるんだ』
「・・・」
『まだ話し合い程度なんだけど・・・。でも何かあったら、オレは本多を庇うから・・・』
「・・・だがアイツが、それを望まない」
うんと寂しそうに呟く佐伯に、すぐに向かうと言って通話を切る。
「・・・バカばっかりか」
佐伯は話し合いで終わるなら、それでいいと考える。
けれど終わらない場合、説得できるのが俺しかいない。
深い溜息を付くと、運転手に早く向かってくれと頼む。
そして流れていく町並みに、今は構っている余裕もなく前だけを見詰めた。
(頼むから、何も起こらないでくれ・・・)
お互いに、傷付かないで欲しいが
佐伯と同じで、何かあれば俺は本多に味方してしまう。
それを見た本多は、自分を責めるだろう。
だから俺に、本多を守らせないでくれ。
「・・・」
理不尽な想いだと罵られても、俺は本多が大切だった。