オペラ劇場

□BLUE
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だけど到着した場所には、本多しか居なかった。

「・・・」

「遅かったな」

佐伯に聞いていたのだろう、本多は俺の姿を見て微かに笑う。

いつもより、寂しそうな顔で。

「・・・大丈夫か?」

「ああ・・・。皆に、赦すと言われた」

空を見上げて、本多は瞼を閉じる。

最初から、本多には罪がない。

けれど本多の行為を、皆が罪と呼んだ。

「お前が来てくれて、良かった」

不意に真剣な表情で俺を捉え、乱暴に抱きしめられる。

「・・・本多」

「やっぱり俺は、赦されたかったみたいだ」

「・・・」

「ありがとう、松浦。俺を赦してくれて」

ずっと、負い目を感じていた本多。

ようやく、本多の罰が終わる。

「・・・」

「なんか、カッコ悪いな」

「大丈夫だろ。お前がカッコ悪いのは、元からだ」

「ハッキリ言うなよ。傷付くだろ」

耳元で聞こえる、笑い声。

神様。ありがとうございます。

本多の罪を、消して下さり

心からの笑顔を、戻してくれて。

「さて、仕事するか」

「お前の所為で、今日は残業になるしな」

「ははっ。それなら、飯でも作っといてやるよ」

今日の夕飯は、本多の得意料理が出迎え

明日も明後日も、本多の笑顔が、俺を迎えてくれる。

だから今度は平坦で、穏やかな道を選んで

転んで傷付かない様に、俺がお前の隣を歩いてやる。

そして、俺の隣で幸せそうにしてくれればいい。

それだけで、俺は幸せだ。


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