オペラ劇場
□Passion
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「これ、ありがとう」
カサッとジャケットが入った紙袋を上げると、別にと煙草を取り出す。
車で家に帰る途中、オレは外を眺めていると、見知った顔が歩道を歩いている。
「あれ?本多だ」
「・・・。そうだな」
本多が歩く先には、オレ達の家しかない。
「遊びに来たのかな?どうする?」
「・・・お前が対応しろ」
車を路肩に停めて、煙草に火を付ける。
お前はどうするんだと尋ねると、適当に遊んで来ると答えた。
「・・・帰って来るよな?」
「お前はバカか?帰る場所は、一つしかないだろ」
車を降りて俺を見ると、視界が少し歪むのは煙草の煙が目に染みたからだ。
「じゃあな」
今生の別れじゃないのに、縋り付きたい気持ちになるのは
どうしようもない程に、自分に恋心を抱いたから。
「おっ?克哉。ちょうど、お前とこに行こうと思ってさ」
「・・・。うん、それなら一緒に行こうか」
「そうだな」
こんな気持ちを抱かせた、俺が憎たらしい。
そして愛おしい。
「でも、こんな所で何してたんだ?」
「ん?散歩だよ」
買って貰ったジャケットを、わざと車に置いて来ていた。
あれを俺が帰ってくる保険にしようなんて、また怒られるなと心の中で笑った。