オペラ劇場
□HEART STATION
1ページ/3ページ
君の携帯の番号は、携帯の短縮に登録している。
すぐに電話を掛けれる様に、なんて言い訳がましい?
それとアドレスナンバーが0番だって事は、君には絶対言えないな。
だって凄く嬉しかったんだ。
君に、また出逢えて。
君と、心を交わせて。
夜中までの残業に飽き飽きして、家路に車を走らせている。
予定では克哉とご飯を食べに行く約束をしていたのに、急な残業でキャンセルになった。
『気にしないでいいよ』
明るい声で言われ、少しだけ寂しかった。
俺だけが君に逢いたいのかと、哀しい錯覚が起きる。
色んな出来事を繰り返し、自分の想いをさらけ出す事で、君を手に出来た。
恥も外聞も捨て、心の奥底から叫んで伝えると、克哉は泣きそうな顔で笑う。
『お前が傍に居たいと言ってくれて、オレは嬉しいよ・・・』
助手席に投げ捨てた携帯をチラッと見ても、電話着信を知らせるランプは光っていない。
「はぁ・・・」
それでも諦め切れず、赤信号で車を止めた時に携帯を開く。
メール着信を知らせる表示もない。
短縮ダイアルは、番号のボタンを長く押す事。
克哉の携帯は、1に登録してある。
それに軽く触れ、指を離した。
「・・・ダメだな。俺は・・・」
携帯を閉じてハンドルにもたれ掛かり、信号が変わるのを待つ。
『紀次・・・。明日は逢える?』
日付は、もうすぐ変わる。
先に赤信号が変わり、青く光るランプを見詰めた。
「よしっ・・・」
ポンッと携帯を投げると、ハンドルを切り直して克哉の家に向かった。