オペラ劇場

□HEART STATION
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克哉の家に到着すると、まだ部屋に明かりが灯っている。

それを確認してから、少しだけ迷い、短縮ボタンを押した。

コール音が車内に鳴り響き、慌てた様子の声が耳に届く。

『仕事、終わったの?』

「ああ・・・。それで明日と言うか、今日なんだけど・・・」

時刻は、深夜を指し示す時間。

克哉は俺の言葉に、ふふっと笑い言葉を返す。

『紀次が、オレと同じで嬉しいよ』

「同じ?」

『早く逢いたいなって、思ってない?』

克哉の言葉に同意すると、コンコンと車の窓が叩かれる。

そして助手席に乗り込む克哉に、通話を切って携帯をしまう。

「何だ・・・。気付かれてたのか」

「うん。上から見えたから・・・」

薄着の克哉に上着を貸すと、おずおずと受け取る。

それを羽織り、深く腰掛けた。

「何だかさ。変な感じだね・・・」

「・・・」

「あんなに喧嘩したのが、嘘みたい」

克哉の心に、トラウマになる程の痛い傷を俺が残した。

けれど克哉は、それを乗り越え俺を赦し

そして今は、温かい関係を築いている。

「後悔してる・・・。君に酷い事をしたと・・・」

「・・・。でも紀次は、オレに優しいよ?」

あの時も優しくしたくて、嘘を付いていた。

君の味方は、俺だけだと言う幻想を見せて

俺だけのモノにしたかった。

嘘がバレなければ、克哉と俺はどうなっていただろう。

「ありがとう。オレは紀次のお陰で、強くなれた」

「・・・」

こんなにも、君は強くて優しい。

嘘がバレないとしても、罪の重さに耐えられず、俺は懺悔しただろう。

こんなにも俺が恋焦がれる人に、見合いたくて仕方がない心。

この心の拠り所は、君の心しかないんだ。

「俺こそ、ありがとう。俺は君が好きだ」

「それは知ってる。だからオレも、紀次が好きだよ?」

互いに目配せして同じ気持ちを共有すると、どちらともなく唇を合わせ深夜の密会を終えた。

今日の夜に、また逢う事を約束して。


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