オペラ劇場

□Beautiful World
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集合ポストに郵便物を取りに向かうと、御堂宛てに一枚の葉書が入っていた。

同窓会の開催を知らせる葉書。

「行くんですか?」

出席するとなれば、休みを取らないと行けない場所なので

尋ねると御堂はソファーに座り、遠い目で葉書をテーブルに置く。

「そうだな・・・。ちょうど時間にも、余裕が出来たから参加するか・・・」

「・・・。何だか、行きたくないように見えるが?」

珈琲を入れたコップを差し出すと、御堂の隣に腰掛けた。

御堂は小さな溜息を付きながら、珈琲を受け取り一口啜る。

「行きたくない訳はないが、面倒臭い男がいてな」

「もしかして虐められてたんですか?」

「その逆だ。何かと世話を焼きたくて仕方ないが、周りからすれば有難迷惑な男」

「本多みたいな?」

一瞬だけ考え、御堂は可笑しそうに笑う。

「あれより質が悪い」

「・・・もしかして、お前の事が好きなんじゃないか?」

「まさか?そんなの、ある訳ないだろ」

有り得ない話をするなと怒られながら、葉書を取って場所を確認する。

「まぁ、そいつに限らず、浮気しないで下さいね?」

「・・・。君こそ、私が居ないからと言って、羽目を外すなよ?」

「そうだな・・・。貴方が居ないと寂しいから、藤田を虐めとく」

程々にしろよと葉書を俺から取り上げ、出席の電話を掛けに自室に向かう。

「まさか、な・・・」

煙草を取り出し呟くと、ジッポライターのオイルが切れた事に気付き、深い溜息を付く。

本当に、あの人は自分に向けられる好意に無頓着だな。

そういう言葉を聞いて、ようやく他人の好意に気付く。

悪意には敏感なのに、好意には興味がない。

「・・・」

それが良くも悪くも、人を引き付ける恋人を持つ性か。

頭を掻いて煙草を仕舞うと、オイルを置いている自室に向かった。
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