オペラ劇場

□Beautiful World
3ページ/4ページ

予約したホテルは一人部屋で、二人部屋にグレードアップしようとしたが

『申し訳ありません。本日は、お部屋が満室でして・・・』

「結構、大きいからシングルでも問題ないじゃないですか」

ベッドに腰掛け、靴を脱ぎ捨てた後は寝転がり

寝場所を半分開けたマットを、佐伯はポンッと叩く。

「大きさの問題じゃなく、世間体の問題だ」

叩いた場所に座ると、腰に手を回され引き寄せられる。

「俺は貴方が居れば、どんな場所でも寝れますけどね」

「・・・それじゃあ、私が居ない時はどうするんだ?」

「寝ないだろうな・・・。現に寝れなかったし」

あふっと欠伸をして、眼鏡を外した佐伯は瞼を閉じる。

「そういえば仕事はどうした?」

「・・・。全部、片付けてから来た」

「片付けたって・・・、大量にあっただろ?」

「昨日から寝ないでした・・・」

寝ながら答える佐伯に、目を丸くした。

昨日の昼から出かけた後の話に、驚きと呆れが混じり最後に苦笑する。

(ついでに実家に帰れば、これか・・・)

寂しがりやは佐伯の方で、私が少し離れるのも嫌なんだろう。

それなら一緒に住む前はどうだったのか、少し聞きたくなった。

そして、もっと前の空白の1年間は?

靴を脱いで隣に寝転がると、瞼を少し上げてまた閉じる佐伯に寄り添う。

「・・・」

「君は、そんなに私の傍で寝たかったのか?」

返事の代わりに身体を抱き寄せられ、佐伯の胸に顔が埋まる。

空白の1年間。

ずっと君は、私を求めていたのだろうか?

私の傍で、安らかな眠りにつく事を。

ずっと、私の影を捜していたのだろうか?

私が佐伯の影を捜していた様に。

静かな寝息が聞こえ始め、手を伸ばして部屋の明かりを消した。

佐伯の願いが叶ってくれた事を、誰かに感謝して

私も、少し狭いベッドに眠りにつく。

そして明日は帰りのチケットを取り直して、今度は少し大きいベッドに二人で眠りについた。


Next→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ