オペラ劇場

□Beautiful World
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イタリアンの店を貸し切った、よくも悪くもない同窓会。

大学なら友人もいて、楽しめるが

高校では懐かしい顔が揃っていて、別の意味で楽しめた。

「御堂、ビール注ぐか?」

「自分でするからいい」

「これは食ったか?」

そして例の男は、呆れる程に変わっていない。

「必要ない。食べるとしても、自分で取りに行くから構うな」

「そう言うなよ。取りに行ってやるって」

ニヤニヤと私の肩を組んで、ビールを飲む男に内心で溜息を付く。

(叩きのめしても、効かないか・・・)

「なぁ、御堂はどこに泊まるんだ」

「近くのホテルだが」

「それじゃあ。あいつら誘って、この後も飲もうぜ?」

名前を呼ばれた者が、苦笑いしながらジョッキを軽く上げる。

「・・・。すまないが、朝一で帰るから飲みに行けない」

「そんな事、言うなって。せっかく、久しぶりに会えたのに」

酒臭い息が、頬に掛かる。

(出席するんじゃなかった・・・)

これなら家で、佐伯と過ごせばよかった。

佐伯一人では大き過ぎるベッドで、二人でゆっくりすればよかった。

考えた事に思わず笑みを零すと、それを見た男が何を勘違いしたのか、私の耳元で囁く。

「二人きりでも、俺はいいぜ?」

「・・・」

『寂しくなったら、この跡をなぞって下さい』

シャツに隠れた、鎖骨にある跡を静かに撫でる。

そして思いっ切り、男の足を踏んだ。

「イテェーな!!」

「悪いな。君より脚が長くて、知らない内に踏んだみたいだな」

涙目で私を見る男に、鼻で笑いかけた。

「随分、世話になったが、全て迷惑行為に等しいと思い知れ」

もう片方も踏み付けて店を出ると、店内から笑いと歓声が聞こえてくる。

場が白けない事に少しだけ安堵すると、携帯を取り出した。

電話を掛けると、すぐに取られいつもの笑い声が聞こえる。

『もう寂しいんですか?』

「そうだ。君が居ないと面白くなくてな」

『それで?』

続きを促す佐伯に、空を見上げて答えた。

「もしも、今すぐ逢いたいと言えば、君はここに来てくれるか?」

『へぇ・・・。貴方がそんなに素直なんて、俺は涙が出ますよ』

「茶化すな・・・。まぁ明日、朝一で帰るから・・・」

視線を前に戻すと、見慣れたシルエットが瞳に写る。

「残念でした。俺も逢いたかったから、ここに来た」

「・・・。そうか・・・。君も私に逢いたかったか・・・」

何故だろう?

私と同じ気持ちを持ち合わせてくれた君が、嬉しくて仕方がない。

「寂しさは消えました?」

「うるさい」

「ククッ・・・。顔が赤いですよ?」

先程の言葉を思い出すと、恥ずかしさで赤い顔をになるのを

アルコールのせいだと嘘吹くと、佐伯は少しだけ微笑んだ。
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