オペラ劇場

□Be My Last
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理性を保ちながら酒を煽り店を出ると、克哉を家に送っていく。

帰り道、無言の克哉に俺も言葉を失わせていた。

「・・・じゃあな」

「本多・・・。お茶でも飲んでいけよ」

玄関を開けたまま、中に入っていく克哉。

「いや、もう遅いし。帰るよ」

そして玄関を閉めようとすると、強引に腕を引っ張られ後ろで扉が閉まる。

「克哉?」

「本多は、もうオレが嫌いなんだ・・・」

「お前、なに言ってんだ?」

俺の腕を掴んだまま俯く克哉に、疑問が口から出る。

「だから、この頃オレを避けるんだろ?」

そして克哉は自分で言った言葉に、傷付いた顔をする。

「最初は好きだとかずっと言ってたのに、最近じゃ一言も聞かないし。オレと二人になるのも嫌がって・・・」

「・・・」

「オレの気持ちが追い付くのを、もう待ってくれないんだな・・・」

掴んだ手を離し、哀しげに瞳を伏せていく。

何を言っているんだ?

好きだと言わなくても、十分過ぎる程に知っていると思っていた。

二人きりになると、理性が保てられない。

俺が、お前を好き過ぎるから。

「こんな気持ちになるなら、本多を好きになるんじゃなかった・・・」

好き?

誰が?

誰を?

俺が、克哉をじゃなく

(克哉が、俺を好きだと?)

「だから、もう最初から無かった事にしないか?」

「・・・はぁ?」

「本多がオレを好きじゃないなら、最初から無かった事にして

親友として傍に居させてくれないか?」

克哉の悪い癖は、ネガティブな考えしか持ち合わさない事。

つまり俺の気持ちが冷めて、克哉との関係を断ち切ろうとしてると思っている。

だから最初から俺の告白を無いモノとして、親友の関係に戻ろうとしていた。

勝手な解釈の極論。

「あのな、お前は俺をなんだと思ってるんだ?」

「・・・やっぱりダメだよな」

「それは違ぇって。と、言うか俺は、お前が好きに決まってるだろ?」

呆れた溜息を付くと、克哉は眉尻を下げた情けない顔で俺を見る。

叱られた子犬みたいにションボリと、だが頑なに首を横に振るう。

「嘘はいいよ。オレは大丈夫だから・・・」

神様、こいつの悲観的主義をどうにかしてくれ。

嫌われる覚悟を決め靴を脱ぎ捨て、克哉の手を引っ張り奥へと進む。

「本多?・・・うわっ!」

克哉をベッドに倒すと、両腕を抑えた。

「一つだけ聞く。お前は、俺が好きか?」

「・・・うん。好きになった・・・ 」

視線を逸らされず、告げられる言葉に微笑んだ。

「だったら分かるだろ?お前と二人きりになると、俺はお前が欲しくなる」

「・・・」

「もう嫌とか言うなよ?」

互いの息が掛かる程に近付くと、克哉は優しい笑みを浮かべる。

「もう言わない・・・。だからいいよ・・・」

その答えに、思わず撃沈した。

「お前・・・、それ反則だろ・・・」

「・・・。何だよ、それ。本多が嫌とか言うなって、言ったんだろ」

克哉に覆い被さったまま怒られ、二人で苦笑した。

「俺達、色気がないな」

「そうだね。でもオレ達らしいな」

俺にとって、克哉は最初で最後の愛してやりたい男。

掴んだ腕を解くと、俺の手に克哉の指が絡まる。

ようやく繋げた手に、優しく口付け囁いた。

「お前が好きだ・・・」

「・・・オレも好き」

そして俺は、克哉にとって最初で最後の男になりたい。


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