オペラ劇場
□Be My Last
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《鬼畜眼鏡の友情End後》
自分の気持ちを相手は知っている。
それは嬉しい。
けれど自分と同じ想いを、相手は持っていない。
あの手を握り締めたい。
あの身体を抱きしめたい。
あの唇にキスをしたい。
同じ想いを持ってくれるなら、いつまでも待ちたい。
「本多?昼飯、行かないのか?」
「あ?悪ぃ、考え事してた」
椅子から立ち上がり伸びをすると、克哉は考え事なんて珍しいなと話し掛ける。
「あのさ。時間が空いたら・・・」
「本多くん。すいませんが、今すぐ3課の課長から書類を貰って来てくれませんか?」
克哉の言葉を遮り、片桐さんが俺に仕事を頼む。
「分かりました。すまん、先に行っててくれ」
「・・・。うん」
けれど克哉は何故か俯いて、ネクタイの結び目に手を掛ける。
こいつが不安になっている時の癖。
それに気付いてポンッと頭を叩くと、驚いた顔を上げて不意に微笑む。
「オレ、下で待ってるから」
「おぅ。それじゃあ、さっさと済ましてくる」
ずっと傍に居た。
些細な癖も、仕種も、表情も、ずっと見ていた。
(俺はやっぱり、お前が好きだな・・・)
結ばれなくても、好きでいたい。
お前が俺の気持ちを赦してくれる限り、傍に居たい。
だから、どうか赦してくれ。
この間違った感情を抱いた事を。
俺に取っては、間違いではない感情を。