オペラ劇場
□Fry Me To The Moon
1ページ/5ページ
ある日執務室で作成した書類を、御堂さんに渡していると仕事の近況を聞かれた。
「変わった事ですか?」
「近々、人事異動が行われるそうで、派閥争いの余波が君にも来るかもしれない」
御堂部長の推薦で子会社から引き抜かれてから、色々と陰口は囁かれていたが
それが目に見えて、酷くなると言われた。
「だが、全て無視しろ」
「無視ですか?」
「君には私が認めた能力がある。それを誰が何と言おうと、事実でしかない。
それなら、無視するのが一番効果的だ」
さらりと褒められ、恥ずかしさで居心地が悪い。
それを知ってか、御堂さんは厳しい顔でオレの名を呼ぶ。
「佐伯克哉。まだ謙遜するなら、私は怒るぞ?」
「はい・・・。怒られない様に、努力します」
それでいいと満足げに頷き、それとと続けた。
「仕事に支障が出るなら、私に相談しろ」
「分かりました」
この時は、甘く見ていた。
仕事にまで影響する程に、ターゲットにされていたとは思っていなかったから。