オペラ劇場

□Fry Me To The Moon
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あれから静寂を取り戻し、スムーズに業務を行えるようになった。

「ようやくオレも、MGNの社員だって胸を張って言えますよ」

執務室で業務報告をしながら、御堂さんに伝えると拗ねた顔に変わる。

「どうかしました?」

「私が何を言っても謙遜していたのに、藤田に言われただけで君の心持ちが変わるなんて・・・」

面白くないなと呟く。

「だって御堂さんは、オレを甘目に見てるから・・・」

「克哉?私は仕事に関しては、厳しいぞ?」

オレの言葉を切って捨てると、溜息を付く。

「私が最初に認めたのに、藤田に負けるとは・・・」

そして、また深く溜息を付く。

「御堂さん・・・。面白がってますね?」

「なんだ?気付かれたか」

ククッと反応を楽しんでいた御堂さんは、オレの手を握る。

「オレは、御堂さんに認められて幸せです」

尊敬している人に、認められて嬉しい。

キュッと握り返すと、御堂さんの親指が慈しむように手の甲を撫でる。

「ありがとうございます」

微笑んで御堂さんを見ると、優しい瞳にオレが写る。

それが段々と近付き、ゆっくりと瞳を閉じると唇に熱が当たった。

月へと飛ぶ想い。

孤高な存在の月に、オレは強く惹かれていた。

あの月に憧れ、見合う存在になりたかった。

そして、ようやく月に見合える想いを、育てられました。

それを今から届けますね?

「オレは、貴方を尊敬しています」

この言葉の、別の意味は

オレは、貴方を愛しています。

「・・・それは嬉しいな」

尊敬している貴方の傍に居られて、オレは幸せです。

それが伝わるように、ずっと微笑み続けよう。

どうかオレの微笑みで、皆の心が温まりますように。


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