長編劇場
□箱庭の蛍
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空を見上げた先にそびえ立つマンション。
一歩踏み入れれば真実が。
一歩下がれば安寧が。
どちらを選べば良かったのだろう?
彼等の真実を暴けば
彼等の箱庭は壊れてしまう。
彼等の真実を隠せば
彼等の愛は歪んだまま。
最後に見た顔は幸せだと笑っていた。
この記憶のまま忘れた方がいいなんて有り得ない。
誰かに赦されたい。
この行為を行えば彼等の愛を否定する事になる。
それでも踏み入れて待ち望む。
微かな希望を叶える時間を待ち続けた。
箱庭を壊す時間を待ち続けていた。