長編劇場
□無花果
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『眠りに付きたくない』
そう言うと佐伯は、オレを抱きしめた。
『それなら俺も起きててやる』
そして優しく髪を撫でられて、夜を過ごしていく。
佐伯は、何かを知っている。
けれどオレは聞かなかった。
(違う・・・。聞きたくないんだ)
傷付くのが怖い。
それは心が弱いから・・・。
だから自分を守る存在を造った?
だから自分を傷付けない存在を造った?
恐怖心が心を侵食していく。
「佐伯・・・」
「・・・何だ?」
髪を撫でるのを止めて、佐伯は優しくオレに尋ねた。