長編劇場
□紺碧の弾丸
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「ご馳走様でしたと、ここまで送って下さり、ありがとうございます。すごく……、楽しかったです」
何度も礼を述べる彼は、アルコールで紅潮した頬を外気に曝す。
それを見詰め、別れの挨拶をしようと口を開いた。
「克哉」
自分が放つ筈の言葉を遮り、彼の名を呼ぶのは明るい髪色の持ち主。
紅潮した頬を青ざめさせた彼と同じ髪色をした、双子の兄、佐伯。
彼のアパートを後ろにして、ただ笑顔を自分達に見せた。
「御堂部長、あとは俺がします」
有無を言わす気がない表情。
彼の腰を抱き、言外に早く帰れと訴えている。
「あ、の……。すいません……。今日は、本当にありがとうございました……」
下を向いて言う彼は、隣の人物にどういった感情を抱いているのか。
「……。私も、今日は楽しかった。また……」
「……」
・・
「二人で飲もう。克哉」
驚きを表す、蒼い瞳。嫌悪感を示す、蒼い瞳。
ポツリと降り始めた雨粒が頬に当たる頃、最初は小さかった嫉妬心が増していくのを感じた。
雨が降り続け、それが強い風を孕み、嵐となるのを知るのは、明日。