長編劇場
□紺碧の弾丸
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人生で初めて見た、双子の感想としては単純なものだ。
“容姿は似ているのに、正反対な性格をしている”
眼鏡を掛けた佐伯克哉は、酷く他人に厳しく
掛けていない方は、逆に優しすぎると感じた。
けれど、時間が経つにつれ、私は認識を改めた。
この双子は、性格も同じ。
二人ともに、他人を拒絶しているのだ、と。
2章
そして、とても純粋な気持ちで
「もしかして、口に合わなかったか?」
「そんな事は、ありません……。ただ、こんな場所に慣れていないだけで……」
恐縮して萎縮するのは、元々の性格だろう。
だから、敢えて個室がある店を選べば、佐伯克哉は恥ずかしげにワイングラスを手に取る。
しかし、慣れないと言いながらも、無様な姿を曝す事はしない。
それは、きっともう一人の佐伯克哉も同じで……。
「あれから、佐伯は大丈夫だったか?」
深紅の液体は、深い味がするから好きだ。
寝かせば寝かす程に、味に深みが増し、価値も上がる。
「……大丈夫ですよ。急ぎの用では、ないみたいでしたから」
嘘を吐く時の顔位、バカでも分かる。
自然と口角が上がり、誤魔化そうと笑顔になるのだ。
入り込ませない様に、踏み込ませない様に。
他人に、弱味を見せない様に。
「……なら、いい」
「……。お気遣い、ありがとうございます」
淡く笑み、液体を摂取するのもまた、佐伯克哉と言う。
『仕事をするのは、楽しいです』
それなら、他は?
興味もないのに話を合わせ、浮かれた他人を尻目に、淡白な感情を抱いているお前は、何に興味があって、何がしたい。
(……。誘いに乗ったからと言って、焦り過ぎるな……)
「御堂部長?ワイン、おつぎしましょうか?」
「……すまないな。お願いする」
カシャッと、小さくワインを冷やしていた氷の粒が、音を立てる。
ワインボトルを手にした彼が、私のグラスに深紅を満たして、ふわりと微笑した。
「美味しいワインですね。普段、飲まないから、勉強になります」
「……そうか。逆に私はワインばかりだから、他を教えようにも詳しくなくてな」
「ふふっ、そうなんですか?でも、ワインって言うだけで、とてもお洒落な感じがしていいですね」
興味がある。私は、君の方に。
それは、純粋な名を付ければ、恋と言う。