オペラ劇場
□流星
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真っ白なカーテンが、窓際で風もないのに揺れ動く。
克哉が視線を横に向けると、御堂が厳しい瞳で、彼を見詰めていた。
「今更、私の家の前で生き倒れるなんて、どういう積もりだ?」
「・・・」
「聞いているのか?」
御堂の眉間の皴が深くなるにつれ、ぼぅとしたまま克哉は呟いた。
「どうして?」
「それを私が聞いているのだが・・・、君も分からないのか?」
清潔な匂いを感じながら、はいと克哉が頷く。
それに対して、御堂が深い息を吐き出した。
「痛い所は?」
「・・・。・・・」
克哉が上半身を起こすと、白いベッドが少し軋む。
ジッと観察されているのを気にせず、窓際まで歩み克哉は闇色の空を見上げた。
「どうして、オレはここに居るんだ?」
光が瞬く星。流れる様に、空を過ぎる。
病院の白いベッドに目線を移して、床に崩れ落ちると克哉はむせび泣いた。
「オレが・・・、アイツを置き去りにしたから・・・」
「・・・。少し落ち着け、深呼吸しろ」
その肩に触れて、御堂は背中を撫でる。
そして力無く首を横に振るい、克哉は孤独な星を見詰めた。
「お前が居ないと、オレは独りなのに・・・」
孤独な星。アルファルド。
隣に、流星なんか流れない。
だから、ずっと独りで瞬いて
「本多・・・。ほんだ・・・」
寂しく孤独に、闇の中の星を照らす。
見えない光を、届ける様に。
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