お題劇場
□それを世界と呼んで
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暗闇に映える赤い首輪。
これがある限り、僕は彼の愛玩動物となる。
けれど首輪と同じ赤い火種を、蒼い瞳に写す彼。
ねぇ、コッチ向いて?
乱暴に啼かされた声は、掠れて声にはならず
乱暴に抱かれた身体は、手を伸ばす事すら許さない。
克哉さん。コッチに気付いて?
祈っても届かないなら、本気で獣に成り果てようか。
けれど、せめて今一度
彼の名前を呼ばせて下さい。
「か、つや・・・さん・・・」
「・・・」
掠れ過ぎて、空気も震えない声。
白い煙りが彼の唇から吐き出され、少し空気が震える。
そして手の置き場所が変えられ、僕の手に彼の小指が触れる。
「・・・」
それをキュッと掴むと、彼が下を向いて微笑むような気配を感じた。
それを世界と呼んで
すぅすぅと子供特有の寝息が聞こえ始め、握られた小指を軽く動かす。
「ん・・・」
手の平を愛撫する指先に、秋紀は微かに口元を緩める。
その下にある、赤い首輪。
これが無ければ、俺達に関係性が存在しない。
幾度、身体を重ねれば、別の関係性が生まれるだろうか?
燃え盛る、赤い火種。
この煙草が燃え尽きたなら、秋紀を優しく抱き寄せて眠りに就こう。
今はただ、これを世界と呼んで。