お題劇場

□私が世界で無いのなら
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《鬼畜眼鏡R 日常の終焉Endの前》

もしも世界の全てが、敵になったとしたら?

『・・・』

スーツのジャケットや鞄等を床に投げ捨て、ソファーに身を沈める。

『・・・お帰りなさい』

『ああ・・・。ただいま』

眉間の皴に手を置きながら、克哉に返事を返した。

自分だけ仕事が出来たとしても、他人に足を引っ張られる。

それを蹴落とした報いは、いつか訪れるが

それすらも気にしないで、他人を捨ててきた。

『・・・孝典さん』

『何も言うな』

吐き捨てる言葉さえ覇気が無いのを知られ、克哉は静かに隣に腰掛ける。

捨てた人間が、自分を怨み足を捕らえようと蠢いていた。

『貴方は悪くない』

けれど、いつも君は同じ事を言う。

『・・・』

『貴方は間違っていない』

ああ・・・。お願いだから、私をドロドロに甘やかすな。

克哉に頭を抱かれ、優しい心音が耳に届く。

『誰かが貴方を憎んでも、貴方は悪い事をしてないと、オレは信じています』

ドロドロに甘やかされたら、君が居なくなった時、私はどうすればいいんだ?

『・・・』

『オレが愛してる人は、世界で一番優しい人だから』

だから、お願いだ。そんなに私を甘やかすのなら、私から君を奪わないでくれ。

「克哉・・・」

けれど今、隣に座っていた君はいない。

私を甘やかし、愛した君はいない。

別れの言葉さえないのに、ドロドロに溶かされた心が残る。

「・・・今も愛している」

君の世界に、私がいないのなら

私の世界に、君がいない。

それを知りながらも、まだ君の影を捜している。

もしも世界が敵になろうとも、君を捜し続けるだろう。

だから何かに縋り、願いを捧げる。

こんな気持ちを抱かせたまま、私を独りにしないでくれ。

思考すらも奪われる程に嫌われたのなら、二度と君を捜したりはしないから。

だから最後に声を聞かせて欲しい。

別れの言葉でもいい。

君に逢いたい。

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