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□☆おしおきは甘くない 2.  
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…離れた唇を繋ぐ銀の糸。

ああ、きれいだなー、なんて頭の隅で考えながら。

感覚は“そこ”に集中している。

熱く痺れてじんじんして、もうどうしようもない“そこ”に。

疼きが止まらない。もう他のことなんて考えられない。

この疼きを止めることが出来るのは、世界中でただひとり、目の前にいるこの男だけ。


「拓海…もうだめ…」

「…わかってるよ。…そんな顔してる」

「じゃあ…」

「ダ〜メ。…おしおき中でしょ?」

「やだ…!ね、欲しい…」

「まだ、ダ〜メ」

「やだっ!…ね、…して?」

「ダ〜メ!」

「ね〜、もう限界だ〜」

「ダメ」

「…どうしたらしてくれるんだ?」

「さぁ?どうだったっけ?」

「…拓海のイジワル!」

「…教えないよ。…自分で考えて?」

「拓海〜」

「ダ・メ」


…前の時はどうやって許してもらったんだっけ?…終わりの方の記憶がない。

ただひたすらに甘えて、ねだって…わーっ!いやだ!恥ずかしくて思い出したくない!

でも、思い出さないとずっとこのまま…、それも、イヤだ。

でも…ほんとに思い出せない。…それだけぶっ飛んでたってことか?何をしたんだっけ…?



えっ…と、…要するに“やきもち”なわけだから、それが治まればいいわけで。

何もしないよりは、とりあえず。

身体を起こし、拓海の頬に両手を伸ばす。

そのまま、柔らかい髪を指で梳いて、後頭部へ。引き寄せて…キスをしてみる。

最初はそっと触れるだけ。…それから、確かめるように唇を舐め、舌を口内へと侵入させる。



『俺、されるより、したいんだよね』

…前にそんなことを言っていたくせに、私からすると喜ぶのを、私は知っている。

ゆっくりと舌を絡め、口内を舌先でくすぐるように擦る。拓海がいつもするように。自分が気持ちいいと感じるように。

かなり滑らかに舌が動くようになったんじゃないかと自分では思うんだが…私のように拓海が“感じて”いるかどうかは、よくわからない。

私と同じ気持ちになってくれればいい。もう我慢できない…と拓海が思ってくれれば。そう思いながらキスをする。

お願い、伝わって。じゃないと、もう…。

なんだか、恥ずかしさで余計に感じてるみたいだ…。



「はぁっ…」

唇を離し、そっと拓海の様子を窺う…少しうれしそうには見えるけど、これで許してもらえるわけではなさそうだ。

今度は耳の縁を舌先で辿り、窪みに沿って舌を這わせていく。耳たぶにそっと歯をあてて軽く噛んでみる。

そして、息を吹き掛けるように、囁いてみる。や…恥ずかしくて大きな声が出ないだけなんだけど。

「…ね、拓海…、お願い、ちょうだい…?」

拓海に時々無理やり言わされることを思い出し、言ってみる。

「…ね、お願い。もう、我慢できない…」

それから、えーっと…。

「…入れ…て?」

「…よくできました。じゃあ、ご褒美にちょっとだけしたげるv」

「…え?…や!ちょっとじゃやだ!それなら単なる“おしおき”じゃないか!?ちょっとならいらない!」

「…じゃあご褒美に“おしおき”よりちょっとだけ長くしたげるv」

「イヤだ!そんなの余計につらくなるだけ…はっ!あっ!…」

…口ではどう言おうとも、とっくに限界の身体は本気で抵抗するはずもない。…簡単に押さえ込まれてしまった。

それでもまだ力なく抗おうとする身体とは裏腹に、私の“そこ”は待ち焦がれていたモノをあっさりと受け入れ、満たされる悦びに震え始める。



…あっ…あっ…、ん…気持ち…いい…!

「…あっ…あっ…ふっ…ううん…はぁっ…あっ…たく…み…」

「気持ちいい?…イヤだって言ってたくせに、腰、動いてるよ?」

「…うっ…ん…はぁっ…あっ!やだぁ!」

「じゃ、お終いv」

「やだっ、やめちゃいやだ!…や〜〜〜!」

「…気持ちよかったら“おしおき”になんないでしょ?」



…そう、ここからがホントの“おしおき”。

拓海は私のナカへほんのわずかな時間侵入しては、…離れてしまう。

散々焦らされた後の快感は大きく、…その後の喪失感はさらに大きい。…耐え難いほどに。

何度も繰り返され、その度に大きくなる快感と喪失感。その狭間で揺さ振られる私は、次第に壊されていくようで…。

ああっ…、イヤだっ、もうっ…!



「拓海のバカ…、アホ…、イジワル〜!」

「…そんな顔もかわいいね〜、美咲はv」

「なに言って…ふんんっ!…あっ、あっ、あっ、あっ、はっ、あっ!」

「はい、お終いv」

「いや〜っ!!…はぁ…はぁ…はぁ…た、拓海の…」

「今度はなに?」

「…サディストっ!」

「…そうかもね〜?…美咲の泣き顔見てるとゾクゾクしちゃうv」

「う〜〜〜〜〜」

蹴っ飛ばしてやりたい!

なんでこんな恥ずかしい格好で好き放題されなきゃならないんだ!?

もうイヤだ、頭がおかしくなりそうだ…!

「っ…お前なんか、嫌いだっ!」

「はいはい」

「拓海の変態!…あ…やだぁ…」

胸の先端を弄られ、吸われ、甘噛みされ…身体が痺れる。

散々焦らされた身体はどこを触れられても過剰に反応し、面白いぐらい…だろう、見てる方は。

「…ホント、やらしいんだから、…美咲のカラダ」

チュッ、とわざとリップ音をさせて唇を離し、ニヤリと口の端を片方あげて笑う顔が憎らしい。



…こいつだって、久しぶりの時には『ごめん、我慢できない』とか言うんだ。そういう時はなんだかとっても…かわいかったりするのに。

汗を浮かべて、夢中になっている顔がなんだかうれしくて、見てると胸がキュッとなって…。

なのに、今は…。



「ふっ…うっ…、なんで、お前は平気なんだよ!」

「平気なわけないでしょ?俺だって辛いよ?」

「嘘つけ!ぜっっったいに楽しんでるだろ!?」

「そうかな〜?」

「そうだ!…だって、めちゃめちゃ楽しそうじゃないか!?」

ムカつく〜!

「まあねv…いろんな美咲ちゃん見れるしv」

「ほんっっっと、お前ってへんた…あっ、あっ!…んんっ、んっ、あっ、やだぁ…!」

「ふふっ、…声もかわいい…」

「…んっ…もうやだぁ!拓海!ちゃんとしてっ!」

「だ〜めv」

「ヤダヤダっ!なんでこんなこと…ふあっ!あっ、あっ、あっ、あっ!」

「美咲ちゃんがいろいろわかってないから」

「…はっ…いろいろって…」

「いろんなことv」

「それじゃわからないから、ちゃんと…んあっ!はぁっ、あっ、あっ、あっ、あうっ!」

「自分でちゃんと考えて」

…こんな状態で、何を“考えろ”って…。

「…はぁっ…はぁっ…たく…み…もう…」

「イきそう?」

「う…ん。…もう…だ…め…お願いだから、ちゃんと、して…はぁっ!あっ、あっ、あっ、あっ、…ううん!」

「…すっごいよ、美咲、びしょびしょ。見ててもわかるくらいひくひくしてる…イきたい?」

「…はぁっ…だから、お願いって…あっ!あっ、あっ、あっ、やっ!」

「…じゃ、そろそろ終わりにしよっか。…美咲がちゃんと言えたらねv」

「…ふっ…う…何…?」

「“おしおき”終わりだよ、美咲。…なんて言うの?」

「…?…“もう許してください、ご主人様”」

「…まぁ、それもぐっとくるけどね…」

「…ふっ、ん…?…“お願いします、美咲に気持ちいいことしてください、ご主人様”?」

「…“おしおき”終わりだよ?美咲。わかんないの?…それとももっとして欲しい?」

「…やだっ!…やっ…もうイヤっ、ちゃんと…優しくして…?」

「…じゃあ、ちゃんと言って?」

「…だって、わからない…ねぇ、もうヤダ!ごめんなさい!もうしません!!」

もう無理だ!…考えられないっ…!

「…何回“おしおき”されたらわかるのかな…美咲は…」

「あああっ!んんんっ!やっ、やだ…もうだめ!はっ!あっ!あっ!いやぁっっっ…!…」



…拓海は離れてしまったのに、快感が奥からせりあがってくる。全身が熱くなって身体がふんわり浮きあがるような感覚…。

その中で私の“そこ”だけが激しくひくついている。

力一杯抱き締めるはずの相手が見当たらずに、うろたえ、探しあぐねるようにずっと…。



「…っ、はぁっ…、はぁっ…、はぁっ…」

「気持ちよかった?」

「…っ、お、お前なんか、だっ、大っキライだっっっ!!」

「…そ〜んなにひとりでイくのヤなんだ?」

「…〜〜〜だからっ!イヤだって言ってるだろ!?…」

…ったくなんでこんなにこいつは意地が悪いんだ!?

〜〜〜なんで、なんで私はこんなやつのことが…〜〜〜〜〜。



…!?

…そうだ、思い出した、“おしおき”を終わらせる呪文。拓海が聞きたい言葉…。

…なんでこんな単純なこと、忘れていたんだろう…?


「ミ〜サちゃん?顔、真っ赤だよ?」

うっ…ニヤニヤしやがって…これは、思い出したの気づかれてる…。

「…拓海!…ちょっと、耳貸せ」

「だ〜め!…ちゃんと顔見て言って」

う"…やっぱり…。

「…だって…あの…だめ…か?」

「…基本でしょ?」

「…うっ…や…あの…だって、は、恥ずかしい…」

「…俺には美咲ちゃんの“恥ずかしい”の基準がど〜もよくわからないんだけど?こんな格好でおもらししたみたいにグショグショにしてる方がよーっぽど「あ"〜〜〜そういうこと言うなっ!」」

「はい、じゃあどうぞv」

…うっ、ガチで目、合わせられるとちょっと…。

「た、拓海…あの…」

「うん」

「う、あ、あ、あの…あ…あっ…好きだ!」

「…美咲ちゃんってホントは“おしおき”好きだよね?」

「やっ!違う!ちゃ、ちゃんと言う、から…」

「…ホントにぃ?」

「お、おう」

…こんな時じゃないとなかなか言えないから。だから、拓海も…。

わかってる。わかってるんだホントは、いろんなこと。ただ私が素直じゃないだけで。だから…。

「あっ、あの…」

「うん」

そっ、そんな優しい瞳で見られると、余計に恥ずかしいんだって…。

「う…あ…あ…あの…拓海?」

「なに?」

「あの…あ…あ…あぃして、る…」

「…うん。俺も。愛して「嘘だ!」美咲…?」

「…だ、だって、ホントにそうならこんな酷いことするはずないだろ!?」

「ちゃんと埋め合わせはするって」

「…ホントに?」

「ちゃんとしますっ!」

「ちゃんと…優しくしてくれるんだな!?」

「大丈夫。…じゃあ、もう一回最初のキスから始めよっか?」

「…それじゃ嫌がらせだ!」

「くくくっ…、じゃ、美咲はどうして欲しいの?」

「聞くな!」

「くっくっくっ…まったく、わがままなんだから」

「うるさい!」

「はいはい。…じゃあ、お嬢様のお望み通りにいたしましょうか…」



…それから、いつものように拓海は優しく抱き締めてくれて、いつものように気持ちよく…。

後は全て拓海に任せればいい。全て委ねて蕩けていく。



「んっ…拓海…もう…」

「うん。“一緒に”ね…」

「おー…あっ…あっ…あっ…!」

しっかりと抱き締めあって、深くお互いを感じて。

ふたりの熱と鼓動はひとつになって、もうどちらのものかわからないほどとろとろに溶け合ってしまう。

そして、…繋がったところから湧きあがる快感と白い光に、ふたり一緒に包まれていく。

私のナカは拓海の存在を確かめるようにぎゅっと強く抱き締め…熱くなった拓海が強く脈打つのを感じる。

気持ちよくてもう何も考えられない。でも、…胸の奥から沸き上がってくる想いは、“愛してる”…。



…こんな幸せを知ってしまったら、求めずにはいられない…。





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