だ ぶ る

□じぇらしー
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昼時の鳴海探偵事務所。
この事務所の所長こと鳴海亜樹子は、憂鬱そうな表情で部下二人を見つめていた。

「ねえ、ちょっと…お二人さん」

亜樹子がこのような表情をするのも無理はない。
彼女の視線の先には、ホワイトボードに夢中で検索結果を書き込んでいるフィリップと、そのフィリップの口に、ご飯を運んでやっている翔太郎だった。

「…んだよ、亜樹子」

平然とした口調で此方に視線を向ける事もなく、翔太郎が子どもにご飯を食べさせてあげる母親のようにスプーンで肉じゃがを取りながら言った。

「…何だよじゃないでしょうがっ!」

何処から取り出したのか、何時ものようにスリッパで翔太郎の頭を叩くと亜樹子が鋭く突っ込みを入れた。
しかし、もう慣れっこになっているのか「痛ぇーなあ!」と声を漏らしながら翔太郎は叩かれた頭を擦る。

「フィリップくんもフィリップくんよ!! ご飯の時ぐらい、検索は我慢する!!」
亜樹子はそう大きな声で言うと同時にフィリップの手からペンを奪い取った。

「あっ…! そんなー…」

納得いかなそうに眉を下げるフィリップを横目に、亜樹子は翔太郎に念を押すように言った。

「翔太郎くん! …フィリップくんを甘やかさないでよね!!」

スリッパを片手に物凄い形相で亜樹子に言われた翔太郎は、怖じ気づいたかのように後退りをすると「わ、分かったよ…」と頷いた。
「翔太郎、僕もうご飯いらない。検索かご飯かどちらかなら、僕は検索の方をとるよ」

フィリップが亜樹子からペンを奪い取ると、そう翔太郎に言い放った。

「そっか、じゃあこれ洗って来るな」

すっかりフィリップのお手伝いさんと化した翔太郎は頷くと、フィリップと亜樹子を残してガレージを後にした。

亜樹子は椅子に座ると、軽く口を尖らせてまだ何か納得いかなそうな様子が窺える。

「…亜樹ちゃん、君はまだ納得がいかないのかい?」

ちらりと亜樹子を見ると、フィリップが再び視線をホワイトボードに移し、そう呟いた。

「べ、別にそんな事ないけど…」

気持ちを見透かされたような気がして、亜樹子は少し焦り気味にそう言って俯いた。

「ちゃんと言えば良いのに…」

「へ…?」

亜樹子が顔を上げてフィリップの背中を見る。
するとフィリップは亜樹子が此方を見ていると察したのか、その視線の元へと振り向く。



「…“羨ましい”って」


「…!! ―…あ、あたし翔太郎くんの事手伝って来る!!」

亜樹子は急いでその場から立ち上がって言い放つと、逃げるようにその場を去って行った。

フィリップは風のようにして居なくなった亜樹子をフッと笑いつつ呟く。


「…検索を始めよう。キーワードは…」






“嫉妬/ジェラシー”。






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