Black Butler


□ストロベリームース NEW!
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あの男が、鼻歌交じりにキッチンで作業している。

有り得ない。

セバスチャンにとって、自分に従っているのは契約の為だけ。

他に理由なんてない筈。

おかしな事といえばもう一つ。

自分に出す料理の味が変わったという事。


「……僕のご機嫌を取って何をしようとしてるんだ?」


いつもならキッチンに足を踏み入れた途端、背後から幽霊のように現れるセバスチャンも今日は違った。

何がそんなに楽しいのか、わずかだが笑みを浮かべてアフタヌーンティーの準備をしている。


「……何がそんなに楽しんだ?」


本当に理解不可能な事ばかり。

時には笑って人間を殺す悪魔が今はホイップクリーム片手にスイーツの仕上げに勤しんでいる。

セバスチャンの中で起きた変化の元凶は分からない。

もう少し探る必要がありそうだ。


「あれま、坊ちゃん、こんなとこでなにしてるんですだ?」

「っ!!?メイリンっ?」

「坊ちゃんがキッチンなんて入ってはいけないですだ、セバスチャンさんに怒られますだ。」

「………あぁ、そうだな。」


セバスチャンに気付かれては元も子もない。

メイリンも一度決めてある事は主である自分が言っても聞かない。

ここは一度引き下がるしかない。


「セバスチャンに伝えておけ、アフタヌーンティーは早く持って来いとな。」

「はいですだっ!!セバスチャンさーん!!」


駆け足でキッチンの奥に向かうメイリンに紛れて、そそくさとキッチンから抜け出す。

一度部屋に戻ってアフタヌーンティーを済ませたらもう一度だ。

夜までは時間がある。

仕事なんて本気を出せばほんの二・三時間で終わる。

その後はセバスチャンの動向を探る為に色々命令を出せばいい。


「……あの似非紳士執事の化けの皮を剥いでやる。」


本当に幼い頃、新しいおもちゃを与えられた時のように胸が高鳴る。

あの執事には一度ギャフンと言わせないと気が治まらない。

シエルは自然と込み上げてくる笑いを抑えきれずにくすくす笑いながら自室へと戻っていった。 
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