Black Butler
□ガトーショコラ
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最初のスイーツが運ばれてきた。
「お待たせいたしました、まずは苺をベースに数種類のベリーの果汁を混ぜ込んだムースでございます。」
「苺か、香りがいいな。」
最初に出てきたのは綺麗に飾り付けられ、パウダーシュガーが雪のようにかけられたムースだった。
「今年は苺の出来がいいようですよ?糖度も高いので、余分な砂糖は使っておりません。」
「……ん、カシスリキュールも使ったのか?」
シエルはとても敏感な舌を持っていて、大抵の材料は当ててしまう、並のパティシエでは満足できないのはこの舌のせいである。
「香り付けに少々ですが、抜いた方が宜しいですか?」
「……いや、これはこれでいいが、……他にも何か入れているだろう?」
「……あぁ、分かりませんか?」
まるでシエルを挑発するような言葉、シエルはセバスチャンを睨むとムースをもう一口放り込む。
「……?…………。」
「……流石の坊ちゃんでも分かりませんか?」
くすくす笑い、シエルを小馬鹿にするような笑顔でこちらを見つめているセバスチャンの態度が気に障り、フォークをテーブルに乱暴に置くと、ネクタイを掴んで引っ張った。
「いちいち五月蝿い!!少しは黙っていられないのか!!」
「……これは失礼いたしました、悩んでいる坊ちゃんが余りに可愛らしいので…。」
「その口をフォークで突き刺してやろうか?」
「そんな事されても無駄なのは坊ちゃんが良く分かっている事ではありませんか。」
そんな事は百も承知である、悪魔であるセバスチャンには並の攻撃は効かない。
けれど、五月蝿い口をどうしても塞ぎたかった。
「……僕が当てるまで余計な事は言うな、これは命令だ。」
「……イエス、マイロード。」
セバスチャンはこの程度の命令はすぐ破る、シエルの命に関わる事ではないし、むしろ率先してからかってくる。
「……坊ちゃん。」
「当てるまで喋るなと言ったはずだろ?」
「その材料、見事当てる事が出来たら、ご褒美を上げましょう?」
「そんな大層な物が入っているのか?このケーキには。」
「……えぇ、とってもいいものですよ?」
セバスチャンが妖しく笑った、シエルはその意味を知る事無く食べ進める。
「……本当に何が入って……?!」
突然手が痺れ、フォークがテーブルから落ちた。拾おうにも身体が言う事を聞かない。
「……セバ、スチャ……っ、いった、い…何を…っ!!」
「私が坊ちゃんを美味しく頂く為の最高のスパイスを……」
セバスチャンの言葉を最後まで聞く事が出来ず、シエルは深い闇の中に落ちっていった。