Black Butler


□ストロベリームース NEW!
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忌まわしい夢を見たあの日から一ヶ月、なにやらセバスチャンの様子が変わった。

厭味は相変わらずだが、幾分優しくなった気がする。

正確には時折見せていた冷たい視線が無くなった。

仕事をしている時、食事をしている時、いつ、どこに居ても気が付けば傍にいる。

前は違った、自分の仕事をしている時は別々の行動していたし、一人で居る時間も多かった。

今は起きてから寝るまで、それこそ一日中一緒に居る事が多くなった。

そして、以前にも増して自分に甘くなっていると思う。


「……一体、何を企んでいるんだ?」

「?何の事でしょう、坊ちゃん。」

「最近、お前、おかしくないか?」

「………それはどのような意味で取ったらよろしいのですか?」

「言った意味のままだ、おかしいという言葉以外見つからない。」

「……言葉のボキャブラリーの無い方ですね、もう少しお勉強を増やしましょうか?」

「…僕に死ねと言うのか?」

「いくら脆弱な人間でも勉強程度では死にませんよ?」

「…精神が崩壊する。」

「では、私が一から作り直して差し上げましょう、きっと今より優秀な坊ちゃんが出来上がりますよ?」

「…根っからの悪魔だな、貴様は。」

「褒め言葉、有難く頂戴いたします。」


山ほど積みあがった書類の向こうからくすくすと笑い声が聞こえる。

こんな風に良く笑うようになったのも、あの日から。

正直、気が抜ける。

あの邪悪の化身のようなあの男が笑っている。

とても楽しそうに。

書類で顔が見えないのが悔しくて仕方ない。

笑った顔の事を言ってやろうと思ってたのに。


「坊ちゃん、その書類が済んだらアフタヌーンティーに致しましょう、少しお疲れのようですし。」

「……もうそんな時間か、思ったより時間がかかるな。」

「坊ちゃんの無駄口が無ければ、もっと進んでいるはずでしたが。」

「……煩い、終わったぞ。」


丁度半分の書類を終わらせると、大きく伸びをした。

ずっと椅子に座っていると腰も肩もだるくなって仕方ない。


「甘いものでもお持ちしましょうか?今日は頑張っていましたからね。」

「気持ち悪いな、何のご機嫌取りだ?」

「純粋な好意の裏を読むものではありません、では、私は準備してまいりますので…。」

「あぁ。」

「では、失礼致します。」


書類を片手に持ち、部屋を出て行くセバスチャン、やはり、どうも腑に落ちない。

いつもならこの時間に甘いものが欲しいと言えば夕食が入らなくなるからと散々厭味を言っていたのに。


「……少し様子を見てみるか。」


シエルは席を立ち、セバスチャンの後を追うべくまずはキッチンへと向かった。
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