Black Butler


□ガトーショコラ 
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残虐で壮絶な契約を結んでから早三年。会社を建て、一流に育て上げ、この社会的地位を手に入れた。恐れるものは何もない、そう思っていた。あいつに出会うまでは。





‐本邸‐


「まだ出来ないのか、新作のスイーツは。」


この冬に出すファントム社のお菓子の試食会をする事になっているのだが、調理場に行ったままセバスチャンが帰ってこない。


「お、おかしいですだ、さっきすれ違った時、すぐ行きますと言ってたですだ。」


このおかしな訛りを全開にして喋っているのはメイドのメイリン、三年前、セバスチャンが引き抜いて来た人間の一人、メイドの仕事は皆無だが、他の事に関してはだれよりも腕がたつ、闇の仕事に関しては。


「お前が来てから何分経ってると思ってるんだ、早く呼んでこい!」

「は、はいですぅ!」


バタバタと部屋を走り出ていくメイリン、あの様子ではきっとダイニングに着くまで何度壁にぶつかり、転び、泣くのだろう。それがあの眼鏡のせいなのは分かってはいるが、外してやる事が出来ないのが正直心苦しい。その元凶の眼鏡を渡したのはシエル本人だからである。


「…外せば相当の美人なんだがな、仕方ない。」

「何が仕方ないのですか?」


考え事をしていて部屋に入ってきたセバスチャンに気付かず、声をかけられ初めてその存在に気付く。


「貴様!!ノックもしないで入ってきたのか!!」

「ノックに気付かなかったのは坊ちゃんの方でしょう?私はきちんと叩きましたよ、お返事がなかったので心配になり入らせてもらったら、この状態です。」


考え事をし始めると周りが見えなくなるのは悪い癖だが直そうとも思っていない。しかし、セバスチャンに突然声をかけられるのも心臓に悪い。


「だからってこんなに近付く事ないだろ!!」

「近付かないと聞こえないでしょう?それだけでも集中したら何も聞こえないのですから。」


こんなやり取りしていたらきりがない、さっさとスイーツの試食を始めたい。


「いいからさっさと物を持ってこい!くだらない話をしている暇はない。」

「くだらないとは酷いですね、心配して差し上げているのに。」


とても心配をしている顔ではない、シエルの様子を見て楽しんでいる顔だ。面白がっているとしか思えない。


「早くしろ!!時間がもったいない!!」

「畏まりました、マイロード。」









この時、シエルは気づいてなかった、セバスチャンが自分を手に入れる為にこらした罠の数々を。
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