Ice Empress


□憂いのみそ様 NEW!
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「ほら、あれが噂の……。」

「やっぱり可愛いわよね!」

「男テニのアイドルなんでしょ?」

「男にしとくのもったいない!」

「きゃ〜〜〜っ!!みそ様





みそ様と言われ始めてからはや二ヶ月が経ちました。

氷帝学園の中では完全に浸透してしまったこのニックネーム。

さすがに同じテニス部の奴らは言わないけど、クラスメイトは面白がってひたすら使い続けているみたいです。

最初はちやほやされて楽しい部分もあったようですが、今はそうでも無い岳人さん。

実は色んな弊害が起きているご様子です。

例えば、部活の帰り道、顔も知らない生徒に声をかけられ、からかわれたりとか。

ここの所そんな事ばかり。

部活中も気をそがれて、集中できず、跡部に睨まれているとか。

本当にどうしたらいいか分からなく、気をもむ毎日です。


「岳人、気を落とすなや。」

「その内治まるだろ?」

「そうですよ、向日先輩。」

「………はぁ。」

「いい加減辛気臭い溜息はよせ、グランド走らせるぞ。」


別に周りが勝手につけたあだ名だけど、嫌いになれない分複雑な気分の様で。

女の子に騒がれるのは悪くないと思っているみたい。

だけど、ここ最近正体不明の視線が痛いと気が付くと辺りを見回しています。


「……練習に集中できないから、本当に迷惑なんですけど…ね。」

「うるせーな!!このヒヨっこが!!」

「いい加減その言い方止めてもらえませんかね?」

「まだ俺達は引退してねーんだから、邪険にするお前の方が悪いんだろっ!!」

「そうでしたか、もう全国も終わったし、引退したかと思ってました。」

「……てめー、本当にいい加減しろよ?」


二年の日吉がここの所やけに絡んで来ているようで、岳人さんはイライラ。

元々仲がいい訳じゃないけれど、ダブルスも組んだし、嫌いな訳でもないらしい。

だから、本当はこんな会話がしたい訳じゃないんだけどと漏らしていたのだけど。


「本当に仲が悪いよな、お前と日吉。」

「日吉は前からあんな性格ですから、先輩みたいな奔放な人とはあまり合わないんじゃないですかね。」

「そうは思わへんな、むしろあいつの反応は……。」

「……日吉は自分の事を内に秘めて、表には出さねぇからな。」


侑士が肩を叩いて『気にせんとき?』といつもの癖で頭を撫でてると刺さるような視線が背中を貫いたのか、急に肩をすくめ、怯える岳人さん。


「うぉ!!…なんか……視線が…痛い……侑士、手、どかして…?」

「こらスマンな、癖はどうにもならんわ。」

「……侑士、もう一人の視線も痛い。」


まるで剣のような二つの視線に串刺しにされ生きた心地がしないのか、顔面蒼白です。

そんな岳人さんがそっと振り返ると、右の方には跡部、左からは……日吉…くん?


「何であいつが睨んでんだ?」

「せやから言ったやろ?あいつは岳人んこと……。」

「忍足さん、無駄な事は言ってないで練習したらどうですか?」


さっきまで睨んでいた日吉がいつの間にかすぐ後ろに。

物凄く黒いオーラを放ち、傍にいる忍足先輩を睨んでいます。


「……お前も素直やないな、まぁええわ、俺はシングルの練習やさかい、お前らはダブルスの練習したらええやろ。」

「何言ってんだ侑士、高校入ったらまたダブルス組むんだろ?」

「どうやろな、それはあの女王様次第やないか?」


忍足君の視線の先にはカリスマ元部長跡部さ……くん。


「俺は侑士と組みたいんだよ!!跡部に言ってくる!!」

「……跡部さんの手をわざわざ煩わせるんですか?」

「……うっ……。」


こう言われたら何も言えません。


「おとなしく練習しませんか、みそ様?」

「〜〜〜〜っ!!!お前が言ってんじゃね〜〜〜〜!!!!!!」



当分このあだ名は付きものになりそうです。

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