Ice Empress


□愛しのみそ様
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『ねぇねぇ、三年の向日先輩って可愛いよね

『でも、テニスしてる時はすっごくかっこいいよ

『そういえば、向日先輩の口癖、知ってる

『う〜ん……あっ《跳んでみそ》

『そうそうなんにでも《みそ》って付けるよね

『この間、忍足先輩にチョコの袋渡して《これ、食べてみそ》って言ってた

『か〜わい〜

『それじゃあさ、私達の中で向日先輩のあだ名作っちゃおうよ

『勿論、みんな、決まってるわよね

『当たり前…一斉に言うわよ…せーの


『『『みそ様〜』』』



‐三年校舎‐


昼休み、向日は学食で忍足と一緒に食事をしていた、忍足は至って普通の和食だったが、向日の前には明らかに偏食であろうメニューが並んでいる。


「岳人、ちゃんとバランスよう食わんと背ぇ伸びんで?」


忍足が突っ込む気持ちは良く分かる、いくら好きとは言え、唐揚げと納豆とご飯、全体的に栄養バランス右下がりである。


「うるせぇな、侑士、好きなんだからいいだろ!」

「…俺の前で納豆食わんといて…。」


関西人にとって納豆は食べ物ではないらしい、臭いも味も見た目もすべて有り得ないのだ。


「美味いんだから食ってみそ?」


『『『キャ〜〜〜〜』』』


突然上がる黄色い悲鳴、跡部でもきたのかと辺りを見回すが、それらしき姿は見えない。


「今のなんやったんや?誰か来た訳でもあらへんのに女の子が騒ぎよったなぁ?」

「なんかの話題で盛り上がってたんじゃねぇの?」


再び食事を始め、向日は唐揚げをフォークに刺すと、忍足の口の前に差し出した。


「侑士、唐揚げやるから口開けてみそ?」


『『『キャ〜〜〜〜〜』』』


またもや黄色い悲鳴、再び見回すが、変化はない、いや、こちらを向いている女の集団以外は。


「なぁ、岳人、もしかして俺ら見られてんちゃうの?」

「そ、そうみたいだな、何でだ?」


目をキラキラさせてこちらを見つめている女の子達、なにかを期待して待ち構えている。

「……岳人、なんか言ってみたらええんやないか?」

忍足の口には入らず刺されたままの唐揚げを見て、向日はおもむろに女の子の集団に向けた。

「…………食べてみそ?」

『『『いやぁ〜〜〜みそ様ぁ〜〜〜』』』





「「……みそ様?」」
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