Ice Empress
□跡部景吾 HAPPY BIRTHDAY 2010
1ページ/4ページ
去年のあいつの誕生日にはとんでもない事をさせられた。
人前であんな事、思い出しただけで恥ずかしい。
今年はその仕返しをしてやろうとずっと考えていた。
でも、俺様が思ってるより狡猾なあいつをギャフンと言わせられる方法なんてそう無い気がした。
誕生日は何をやっても大概許されるんだろう?
じゃあ、こんな事しても問題はないよな。
「どうしたん?急に呼び出して?」
「今日は何の日だか忘れてんのか?アーン?」
「忘れる訳ないやろ、景吾の誕生日やん」
「ちっ、覚えてやがったか」
「忘れるとか有り得へん、もちろんプレゼントも用意してあんで」
まぁ、忍足がこういうイベントを忘れる訳がない、なんせ恋愛小説好きのロマンチストらしいからな。
毎年、何かかしら用意をしてくるが、高校生になった今年は何を用意してきたんだか。
「で?今年はどんな奇抜なものを用意してきたんだ?」
「何やの?まるで俺のセンスが悪いみたいやん」
「去年は恋愛物の洋書、一昨年は揃いのブレス、だったな」
「それのどこがセンス悪いん?」
「誰も悪いなんて言ってねぇ、言葉のあやだ」
俺様は何でも手に入ると考えているらしく、毎年プレゼントには相当頭を悩ましているらしい、何を用意してきても文句なんて言った事ねぇのに。
「今年はな、これやねん」
「あ?携帯じゃねぇか?今更何だ」
「あ、これなただの携帯やないんやで?」
「どういう事だ?」
それこそ携帯なんて山ほど持ってる、忍足もそれを知らない訳ではないのに。
「実はな、これ、俺専用に使うてほしいんや」
「テメェ専用?」
「そうなんや、しかもいくら話してもタダやねん、俺向きやろ?」
確かに、忍足はメールが苦手で、やり取りをしている最中に電話に切り替える事も一度や二度ではない。
しかも一度電話をするとお互いに切れなくなって結局長電話、通話料も馬鹿には出来ない。
俺様は気にする事はないが、忍足はそうもいかないだろう、なるべくこちらから掛けるようにはしていたが、実はそれが負担だったのかもしれない。
「これで何時間話そうが関係あらへん、お互いが寝るまで切らなくてええんよ」
「……馬鹿な事しやがって」
「ん?何かゆうた?」
渡されたのは黒いシックなデザインの○-PHONE、電源はすでに入っていて画面には○カイプが表示されており、コンタクトのメンバーの中には侑士の名前。
すぐ使えるように自分で設定したのだろう、用意周到な奴。
「俺もお揃いで持っとるから、いつでも掛けてや」
「掛けんのはテメェだろ?」
「まぁそうやけど?」
「……まぁいい、有り難く受け取ってやるよ」
「よかったわ、突っ返されたらどうしようかと思ってたんやで」
返す訳ねぇだろ、好きな奴から貰ってんのに。
だけど、今年の誕生日はそれだけで終わらさねぇ、これだけじゃつまらねぇだろ?
「侑士、もう一つプレゼント寄越せ」
「は?さすがにもうあらへんで?」
「それは俺様が決めてある、物じゃねぇから安心しろ」
「ん?何かしてほしいん?」
「あぁ、明日は運動会の振り替え休日、構わねえよな?」
本当にタイミング良く明日は休日、一緒にいるには丁度いい。
「今日、明日いっぱいって事やんなぁ、別にかまわへんよ」
そう、忍足が俺様の願いを断る訳がない、ある意味こいつも犬気質だよな、全く。
「ならついて来い、渡す物がある」
「渡す物?」
久々にわくわくしてきた、やっとこいつに去年の逆襲が出来る。
嬉々とした表情をしながら自室に向かう。
本当のプレゼントはこれからだ。