Top Secret
□Ice Blue
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……ここは何処なんだ、真っ暗で何も見えない。
目隠しをされていて、目を開けても何も見えない。
目隠しを取ろうとするが、腕が動かない。
縄か何かで拘束されていてびくともしない。
そうだ、叫べば誰か気づいてくれるかもしれない。
口を開こうとした、だが、それもできなかった。
《……一体何が起こってるんだ。》
いつも通りの毎日、特に変わった事なんてなかった。
忍足と街に買い物に出かけ、歩き疲れたと言った俺を公園のベンチに座らせ、飲み物を渡され、それを飲んでから……覚えていない。
《……そう言えば、忍足が一緒に居た筈、あいつにも何かあったのか?》
あまりの静寂に不安ばかり募る。指一本動かせられないこの状況は間違いなく誘拐であろう。忍足も攫われたのだろうか。
忍足と恋人になったから数ヶ月、最近になってやっと二人で出かける事に違和感を感じなくなった。
それまではほんとに照れ臭く、何をするのにも忍足任せだった。
けれど、忍足は嫌な顔一つせず、根気良く付き合ったくれた。
《……あいつに何かあったら、俺は……。》
忍足はすぐに好きだの愛してるだの言うが、俺はまだ一度も言ってやった事がなかった。
簡単には言葉に出来なかった、言葉の重みを知っているから。
忍足はその重みを分かった上で言っていた、だからこそ簡単には返せなかった。
《……無事でいてくれ、頼む…。》
遠くの方から足音が響いてくる、だんだんこちらに近付いてくるようだ。
《誰か来る……一体誰なんだ。》
ドアの前に付いたのだろう、大きくなり続けいていた足音がぴたりと止まり、鍵が開く音がした。やはりどこかに閉じ込められているらしい。
ゆっくりとした歩調で近付いてくる人物に恐怖を抱くも、怯えたからと言ってどうにかなる訳でもない。
今自分に出来る事はいかに冷静になるかという事だけ。
《……落ち着け、落ち着くんだ。》
歩いてきた人物がすぐ傍にいる気配がするが喋る気配がない。
自分の様子を見ているだけのように思える。
傍にいた人物が座った瞬間、空気が動いた。
嗅いだ事がある、この香り。
しかも、つい最近。
頭が混乱をし答えが導かれない。
理解するよりほんの少し先に相手が口を開いた。
《気が付いたみたいやな、跡部。》
その声は間違いなく、恋人の忍足の声だった。