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□毒りんごに媚薬
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「俺、ウサギさんに切ってあるのも好きなんだけどね〜」
目の前には、八当分に切り分けられた林檎。
何でもお裾分けでたくさん貰ったとかで。
それを嬉しそうに頬張るジロー。
「皮ごと全部を丸かじりってのも夢〜」
「やったことねぇの?」
「あるにはあるけど、途中で飽きちゃうんだよねー」
「齧ったとこから、色変わるしな」
「そーそー、あれも気持ち悪ぃ」
「あれって酸化なんだってよ」
「それ考えると白雪姫ってスゲーなって思う」
「お前の頭は今日もメルヘンだな」
「だって、見ず知らずの人から貰った林檎を洗いもせずに齧っちゃったんだよ!?よっぽど食べ切る自信があったってことじゃん!」
「一口目でチャレンジ失敗だったけどな」
「あ!ブンちゃんも見ず知らずの人から貰った物食べちゃダメだからね!」
…一体コイツは俺のことをどんだけ食い意地張ってると思ってるんだろうか。
「ファンよりとか手紙付きで貰ったヤツも危ねぇからダメ!」
「それはただの嫉妬だろぃ」
「違う!俺は本気でブンちゃんの心配を」
「じゃーこの林檎も危ねーな」
「これは大丈夫だよ!多分ご近所さんとかが」
「俺はここんちのご近所さんは知んねぇし。具体的に誰?」
「そそそそれは…」
「お前くれた人見た?」
言うなりジローの顔がサーッと青ざめた。
「どうしようブンちゃん!俺たち知らねぇ人からの林檎食べちゃった!!」
ワーワー言いながら、皿ごと林檎を押し付けて来る。
「俺もういらないっ。ブンちゃんにあげる!」
食うなつったり、食えつったり、忙しいヤツ。
つーかそれって俺を見殺しにしてねぇか?
「ジロー」
「病院言った方がEかな?」
「しぃー」
「?」
首を傾げて大人しくなったジローの頭を引き寄せる。
「!!」
ちゅ、とわざと音を立ててから唇を解放する。
「何考えてんの!この非常時に!」
「欠片が付いてた」
「言ってくれればEじゃん!チューじゃなくて!」
「白雪姫は王子様のキスで生き返ったぜ?」
「それは林檎を吐き出したからで、俺今吐き出せてねぇじゃん!」
「だーい丈夫だって」
「何で言い切れんの!?」
「林檎送ったの、俺」
あんぐり口を開けたままジローは固まった。
それを横目に俺は皿に手を伸ばす。
「ホントにブンちゃんの林檎なの?」
「ホントホント」
「毒とか入ってない?」
「あー…まぁ毒じゃねぇよ」
「何入れたのー!!」
「媚薬?」
「びやく?」
「俺にメロメロになってー、ヤラシーことしたくなっちゃう薬」
「やっぱりいらない!ブンちゃんのバカ!!」
「でももう食っちまってるしなー」
ジリジリとジローににじり寄りながら、終わったら真実を教えてやろうと思った。


E.
(媚薬って存在しねぇんだって)
(しばらくぜっこーね)

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