過去拍手文

□あかくんときいろくん
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パレットに並べた色を伸ばして、画用紙に色を移していく。
美術なんて退屈な授業、いつもなら早々に寝入るところだ。
しかし今日に限って慈郎は真剣な眼差しで、色と色を混ぜ続ける。
赤と黄色を執拗なまでに繰り返し。
色作りに夢中で一向に紙は白いままだ。
傍で色を塗っていた宍戸が見かねて、既成の絵の具を差し出す。
「そんなに気に食わねぇんなら、最初っからあるヤツ使や良いだろうが」
「それじゃダメなの!」
宍戸の手を弾いて、再び慈郎は赤い絵の具に筆を伸ばす。
濯ぎ用のバケツの水まで、とっくにオレンジ色に濁っている。
ようやく納得出来たのか、色を混ぜるのをやめて画用紙に描いた大小様々な円を塗り潰し始める。
「何だそりゃ?」
「俺の子ども」
「はあ?」
出された課題は、自分の家族。
しかし未来のことまで描けとは言われていない。
そもそも円から人間は連想されないし、ペットにすらなりえない。
「こないだ絵本で読んだんだ。あおくんときいろちゃんは、相手のことが大好きで、混ざっちゃってみどりいろになっちゃうの」
「……」
「俺とブンちゃんはあかときいろだから、混ざったらオレンジになんだよ!俺の好きな色だC!!凄くない?」
「あー凄い凄い」
「俺とブンちゃんに子ども出来たら、絶対ぇ髪はオレンジになるよね!」
「遺伝子の優性とかで赤になったりするんじゃねぇか?」
「夢がないなぁ宍戸は!」
そもそも男同士で子どもが産まれること自体、夢という次元を超越している。
しかし頬を膨らませている慈郎は真剣そのもので、これ以上常識で何か言っても通じないことは目に見えている。
「宍戸と鳳に子どもが出来たら、パールグレーとかになんのかな?かっちょE!」
「勝手に人の子どもまで作んな!」
「もー、人のこと構ってないで宍戸も自分の絵を塗りなよ!俺今真面目に授業受けてんの!邪魔しないでよね!!」


E.

完成したら、一番に君に見せに行く。

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