過去拍手文

□眠り姫の目覚め方
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それは突然俺に舞い降りて来た。
パチリ。
夢と現実の間にある微睡みをすっとばして、俺は瞼を開けた。
気怠さもなくスッキリとした頭で時計を確認すれば、午前二時。
まだまだ夜は続いてく。
隣に顔を向けると俺が世界で一番あいしてる人が、規則正しい寝息を立てている。
閉じられた瞼のまつ毛とか、ちょっとだけ開いてる唇とか、こうして見ると本当に綺麗。
普段は俺にかわEとか綺麗なんて言ってくるけど、ブンちゃんの方がよっぽどキレーだ。
ほっぺに流れてる髪を撫でたら
「んん…」
って小さなうめき声。
そんで気付いた。
俺ってブンちゃんの寝顔見んの初めてかも!
いっつも俺が先に寝ちゃって、後で寝たブンちゃんよりも遅く起きるんだ。
ってことはブンちゃんはいっつもこうやって俺の寝顔見てんのかな?
うわ、ハズカC!
頭まで布団を被ってみたけど、やっぱりブンちゃんの寝顔が見たくて元に戻した。


見れば見る程、筋の通った鼻とか、キリッとした眉とか、やっぱりブンちゃんは格好Eんだなって思った。
そんな素敵な人と俺がコイビトだなんて。
実感した途端、夢みたいに幸せで、ちょっぴり寂しくなった。
いつもは俺が寝るまで起きててくれるじゃん、一人で夢の世界に行かないで。ブンちゃんの夢ん中に俺も混ぜてよ。
ソロソロと指を伸ばして鼻をつまむ。
案の定眉間にシワを寄せて苦しそうな顔。
ああ、そうじゃないんだ。そんな顔をさせたいんじゃなくってね。
指を離して考える、俺がブンちゃんにしたいのは……。


普段はお姫様側の俺だけど、今くらいは俺が王子様。
そうっと顔を近づけて、眠ってるお姫様の唇に……。
パチリ。
もう少しで俺の唇がブンちゃんのとくっつきそうだったのに、ブンちゃんの目が開いた。
「あー!!」
「いきなり叫ぶなよ。寝起きの頭に響くだろぃ」
「だって、俺がブンちゃんを起こしてあげようって、だって…」
「起きたんだから良いじゃねーか」
「そーじゃなくて、せっかく俺がチューで」
「ふーん?じゃあその方法で起こして貰うかな。俺もっかい寝るぞー」
そのまんま目ぇ閉じて、わざとらしいイビキが響く。
さっきはイビキなんて掻いてなかったクセに。本当は起きてるクセに。
ほんのちょっと。本当にちょびっと触れるぐらいに唇をくっつけて、すぐ離れた。
だけどブンちゃんは満足したみたいで、笑いながら俺の頭を撫でる。
「なんでキスなんかで起こそうと思ったワケ?」
「王子様になりたかったの」
「ふーん?」
「あとね、寂しかったから」
「寂しい?」
「俺が起きてるのにブンちゃんが寝てて……いつもと逆でちょっと寂しかった」
「ワリーワリー。じゃあ今度はお前が寝るまで起きててやるよ」
ほら。って伸ばされた腕に頭を乗っけて安心した。
「そんで俺がキスで起こしてやる」
そのチューがさっきの何十倍も素敵なことを俺は知ってる。
やっぱりブンちゃんは最高の王子様だ。
俺は安心して目を閉じる。
おやすみなさい、明日まで。


E.

夢で逢いましょう

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